News Scan

虫の足をすくうシワ〜日経サイエンス2021年4月号より

植物の葉に興味深い防虫機構を発見


植物は葉を食べる腹ぺこの昆虫を撃退するために驚くほど多様な戦略を進化させた。嫌な味がする毒物やねばねばの樹脂,鋭いとげなどがよく知られているが,先ごろ別の新たな防御策が発見された。葉の表面に微細なシワがあり,虫が葉の上を歩くのを難しくしているのだ。

FROM “SPATIO-TEMPORAL DEVELOPMENT OF CUTICULAR RIDGES ON LEAF SURFACES OF HEVEA BRASILIENSIS ALTERS INSECT ATTACHMENT,” BY VENKATA A. SURAPANENI ET AL.,IN ROYAL SOCIETY OPEN SCIENCE; NOVEMBER 4, 2020 ( https://doi.org/10.1098/rsos.201319 )

植物の葉の表面にはクチクラという被膜があり,これが水分の蒸発を防ぎ,ガス交換を媒介し,有害な細菌や真菌から植物を守っている。そして多くの葉では,このクチクラにシワができている。Royal Society Open Science誌に報告された最近の研究は,クチクラの表面がそもそも滑りやすいことに加え,小さなシワがあることも昆虫の阻止に寄与していることを見いだした。葉が成長してクチクラ層が厚くなるにつれてシワが目立つようになり,乱雑に曲がったシワが広がるようだ。


「植物は生き延びるのが実にうまい」と英ロザムステッド研究所の分子植物学者マクレガー(Dana MacGregor,この研究には加わっていない)はいう。「葉を食べる動物から身を守るため,構造や化学組成,生理機能を変える優れた方法を備えている。今回の発見は,植物が生き残りを確実にするために自らの形を変えていることを示す新たな例だ」。



表面構造の影響だけを調べる実験


研究チームはゴムノキの様々な成長段階の葉を写し取ったシリコーン製のレプリカを作って実験した。これにより,つるつるしたクチクラの影響を除外して,葉の構造的特性による効果だけを調べることができる。


チームは8匹のコロラドハムシの硬い前翅に小さなセンサーを取り付け,シリコーン製の葉の上で歩かせて牽引力を測定した。ハムシは「若く」て滑らかな葉のレプリカの上を容易に歩いたが,「年を取った」葉のレプリカではシワに足を取られて滑った。
「植物の葉にこうしたシワが生じ,異なる成長段階で昆虫の付着に大きく影響しているのは驚きだった」と,研究論文の主執筆者となった独フライブルク大学のバイオメカニクス研究者スラパネニ(Venkata Surapaneni)はいう。


スラパネニはPlaMatSuという共同研究プログラムに参加しており,こうした微視的なシワを模倣したポリマーによって防虫加工の表面を作ることに関心がある。あるいは植物の交配や遺伝子操作によってシワを増やすこともおそらく可能であり,農業で使われている殺虫剤の量を減らす道が開けるかもしれないという。■





ほかにも話題満載! 現在発売中の2021年4月号誌面でどうぞ。

 

サイト内の関連記事を読む