News Scan

数学と光,半導体に変革〜日経サイエンス2021年4月号より

トポロジカル・フォトニクス幕開け

 

研究をやり尽くしたと思われがちな半導体分野で,新たな研究テーマが台頭している。形を扱う数学「トポロジー(位相幾何学)」と光を操作できる半導体「フォトニック結晶」が融合した「トポロジカル・フォトニクス」だ。未発見の不思議な機能が出現し,注目する研究者が増えている。

 

「ここ1~2年,年100本以上の論文が発表されている。新分野として急速に熱を帯びてきたと実感する」。東京大学の岩本敏教授はトポロジカル・フォトニクスの最新動向をこう語る。

 

どんな研究なのか。岩本教授らが作った基板で一例を示してくれた。小さな穴が規則的に並ぶ,あまり見かけない加工だ。穴の配置などがわずかに違う上側と下側をはさみ,中央にZ字形をした境界がある。左側から光を入射すると,Z字に沿って右側の出口に向かい一方向に光が通過するという。「光は普通,基板内を鋭角に曲がって進めない。トポロジーの理論を取り入れて,光を自在に進行させる操作が可能だと実証できた」(岩本教授)。

 

トポロジーは形の性質を扱う数学の一分野で,リング型のドーナツはトポロジーで見るとサッカーボールと性質は異なるが,持ち手のあるコーヒーカップとは同じだとする例がよく取り上げられる。トポロジーの考え方を材料分野に取り入れて2007~2008年に話題になった新物質は「トポロジカル物質」と呼ばれる。この物質を最初に提案したワシントン大学のサウレス(David J. Thouless)名誉教授,プリンストン大学のホールデン(F. Duncan M. Haldane)教授,ブラウン大学のコステリッツ(J. Michael Kosterlitz)教授は2016年のノーベル物理学賞に輝いた。

 

トポロジカル物質は金属や絶縁体,半導体などには見られない奇妙な現象を起こす。絶縁体でもトポロジーで見て異なる性質を持たせると,平面の場合はその周辺部だけに,立体の場合は表面部分だけに電気を流す。中身は超電導の物質でも周辺部にわずかに抵抗が生じる「トポロジカル超電導物質」も見つかっている。こうした材料をうまく加工して超低消費電力の電子素子や,量子コンピューター用の回路を作れないかと検討が続いている。(続く)

 

続きは現在発売中の2021年4月号誌面でどうぞ。

 

サイト内の関連記事を読む