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大噴火を生む微結晶〜日経サイエンス2021年3月号より

マグマに生じるごく小さな結晶が噴火の様相を大きく変えるようだ

 

定常的な溶岩流を放出する穏やかな火山と思われていたものが,前ぶれなしに突然の爆発的噴火を起こすことがある。ニュージーランドのタラウェラ山で1886年6月に起こった噴火が一例で,広範な被害と死者を出した。火山がどうしてこのような急激で危険な遷移を起こすのかは長年の疑問だったと独バイロイト大学の地球科学者ディ・ジェノバ(Danilo Di Genova)はいう。

 

ニュージーランドのタラウェラ山。
1886 年の爆発的な噴火は微細な「ナノライト」
結晶が引き金となった可能性がある。 Image:giiku

ディ・ジェノバらはScience Advances誌に発表した論文のなかで,上昇するマグマ中に形成される「ナノライト」という微細な結晶粒がこうした破局的転換のきっかけだろうと提唱している。平均的な細菌の1/100程度の大きさしかないこれらの結晶粒がマグマの粘性を高め,火山ガスの脱出を妨げる。これによって圧力が高まり,大爆発の準備が整うというシナリオだ。

 

マグマの冷却過程で生じた「ナノライト」

同チームは電子顕微鏡と分光画像装置を使って,イタリアのエトナ山やインドネシアのタンボラ山などの活火山の火山灰のなかにナノライトを発見した。

 

チームはその後,粘りけが比較的小さいタイプのマグマ(冷え固まると玄武岩になる)のなかでナノライトがどのように形成されるかを調べた。そうした低粘性のマグマからはガスが抜け出しやすく,通常はなめらかな溶岩流になる。チームは実験室で玄武岩を溶融してから急速に冷やすことによって,ナノライトを作り出した。この冷却過程が重要だ。火山噴火ではマグマが火道を上昇する過程で熱を失う。今回の研究で,熱損失のスピードがちょうど適切だった場合にのみ,ナノライトが生じることがわかったとディ・ジェノバは説明する。

 

「マグマは多成分の系だ」とディ・ジェノバはいう。「主にケイ素と酸素でできているが,ほかにもアルミニウムやカルシウム,鉄などの元素を含んでおり,特に鉄がナノライトの形成に最も重要だとみられる」。ナノライトはほとんどが酸化鉄の結晶で,そこに微量のアルミニウムが含まれているという。そして,あらゆるマグマに鉄が見られるため,様々なタイプのマグマがこうした結晶を形成しうると補足する。(続く)

 

続きは現在発売中の2021年3月号誌面でどうぞ。

 

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