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土のなかの古DNA〜日経サイエンス2021年3月号より

土中に保存されている環境DNAは
氷河期の生物に関する知識を書き換えるかも

 

Smithsonian

骨と歯の記録から,カナダ北西部ユーコン準州にいたマンモスが絶滅したのは約1万2000年前だと考えられていた。ところが新たな遺伝物質採取技術は,この巨大な獣がずっと長く生き延び,さらに数千年にわたってバイソンやヘラジカとともに北極圏のツンドラをのし歩いていたことを示唆している。その物語は土のなかに見つかった。

 

骨には先史時代の遺伝情報が豊富に含まれているが,情報源になるのは骨だけではない。氷河期に動物から剥がれ落ちた皮膚細胞から松葉まで様々なものが,土中に保存された遺伝的記録となりうる。古遺伝学者は長年にわたり土壌からこうした「環境DNA」を抽出し解析してきたが,それらの傷つきやすい手がかりを破壊せずにDNA以外の物質を取り除いて精製するのは非常に困難な作業だ。

 

「環境試料には他にも膨大な種類の化学物質が含まれており,調べようとしているDNAから分離するのが難しい」と加マクマスター大学の遺伝学者マーチー(Tyler Murchie)はいう。「得られるものは何であれすべて利用し,失うわけにはいかない」。彼らは遺伝物質にもっと優しく,従来法に比べ最大で59倍の遺伝物質を回収できる手法を考案し,Quaternary Reports誌に報告した。

 

新たな抽出法と濃縮法を組み合わせ

この新手法では,殺菌したたがねを使って土壌サンプルを採取し,さらに小分けしてかき混ぜてから,「コールドスピン法」という方法で可能な限り多くのDNAを分離する。このDNAを既存の遺伝子ライブラリーと比較し,一致する生物種を見つけ出す。

 

「この種の手法はより多量のDNAを回収するだけでなく,より多彩なDNAが得られる」とイーストテネシー州立大学の古生物学者ウィドガ(Chris Widga,この研究には加わっていない)はいう。「以前よりも微妙なことがわかるようになっている。環境DNAは実際,生態系のより大きな断面を記録している可能性があるようだ」。

 

この大きな全体像は小さなサンプルから生まれるとマーチーは説明する。「新規の抽出法と濃縮法を組み合わせたことで,1g足らずの堆積物から複数の絶滅種の全ゲノムを同時に取り出すことができる」。(続く)

 

続きは現在発売中の2021年3月号誌面でどうぞ。

 

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