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キツツキのけんか〜日経サイエンス2021年2月号より

見物人は科学者だけではなかった

 

Acorn Woodpecker with Hoard 米国のウェスタンオークの森にすむドングリキツツキは群れごとに厳しい競争関係の縄張りを作り,何千個ものドングリを蓄えた“餌倉”を守っている。木の幹にたくさんの穴を開け,そこに餌となるドングリを貯蔵しているのだ。この鳥は群れごとに営巣し,共同で子育てをする。蓄えの豊かな縄張りで子育て中のつがいの片方が死ぬと,子育て中ではないライバルチームが周囲から入り込んで,その場所をめぐって戦う。ときに死闘となるこの争いは数日間続くこともある。このけんかは50年以上前から研究されてきたが,最近になって,当事者ではない他のキツツキもこの戦いを熱心に観察していることがわかった。

 

スミソニアン自然史博物館の生物学者バーブ(Sahas Barve)が率いたこの研究はCurrent Biology誌に発表された。研究チームは超軽量の太陽電池式無線追跡装置を数十羽の鳥に装着し,争いを観察する“見物人キツツキ”を発見した。「権力争いは大混乱状態なので,個々の鳥の動きを目で追うことはできない」とバーブはいう。

 

貯蔵餌をほったらかして情報収集を優先

生物学者は,生殖の機会が新たに生じたという情報が驚くべきスピードでドングリキツツキの間に伝わるのを見てきた。今回の研究には加わっていないプリンストン大学の進化生物学者リール(Christina Riehl)は「動物は言語を持たないので,情報の伝達は難しいと考えるのが普通だ」という。「動物は情報をフェイスブックに投稿しないし,道端で話すこともない」。縄張りの近くにいる鳥がどうやってこれほど早く情報をつかみ,ものの数分で争い始めるのかは,まだ不明だ。

 

バーブのチームは,ドングリキツツキの戦いが当事者以外の鳥を引き寄せ,それらの鳥が1時間も見物している様子を観察した。これらの見物人キツツキはその間,自分の餌倉をほったらかしにしている。これは,ライバルについて得られる情報にそうするだけの価値があることを示唆していると,リールはいう。

 

他の群れにいる個体間の関係を監視する行動は鳥ではめったに見られないとバーブはいう。そして,この研究はキツツキが「自分の個体群の社会力学について非常に高度な理解を持っている」ことを示していると付け加える。「動物が複雑な社会システムをどう認識して生きているのか,私たちにはほとんどわかっていないということがよくわかる」。■

 

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