SCOPE & ADVANCE

長さ7倍のカーボンナノチューブ〜日経サイエンス2021年2月号より

早大と静岡大,触媒の変化防ぐ合成法

 

早稲田大学と静岡大学の共同研究チームは,カーボンナノチューブ(CNT)を従来の7倍の長さの束に成長させる合成手法を開発した。合成に用いるガスに特殊な化合物を加え,ナノチューブを成長させる触媒の構造が変化するのを防ぐ。長いナノチューブを応用した導電線などの素材が開発しやすくなり,ナノチューブの量産化にも役立つ。

 

カーボンナノチューブは軽く強い材料で電気も通し,長い形状に合成することで様々な用途に使えると期待されている。原料の炭素は地上に大量に存在するため枯渇の心配もない。基板上に触媒を配置し,炭化水素のガスを加えるとCNTフォレストという高密度の束が成長する。従来手法では合成が進むと触媒の構造が変化して反応を促進する力を失い,合成が約1時間で止まってしまい,長さは約2cmが限界だった。

 

これまでに,触媒に重金属のガドリニウムを加えたり,ガスに鉄を含む有機金属を加えたりすると,触媒の構造の変化が抑えられることがわかっていた。研究チームは今回,これらに加えてアルミニウムを含む有機金属を添加することによって,さらに触媒の変化を抑えることに成功した。CNTフォレストは26時間も成長を続け,約14cmまで成長した。


成長中のCNTの様子:早稲田大学プレスリリースより

 

また合成の際は,合成装置全体を温める通常の方法でなく,基板や触媒など一部のみを温める研究チーム独自の方法を採用。高温によってガスが装置の中で反応してできる不純物が少なくなるため,より純度の高いナノチューブを合成できた。調べたところ,密度が銅線の1/7と軽量なうえ,同程度の導電性を示したという。早稲田大の杉目恒志次席研究員は「銅線より使い勝手のよい導電線を作れるという期待が高まった」と話す。ただ,触媒の構造変化が防げる理由はよくわかっていない。今後はこの理由の解明と反応条件の最適化に向けて研究を続け,さらに長く成長させることを目指す。■

 

もっと知るには…

早稲田大学:世界一長尺なカーボンナノチューブフォレストの成長に成功

・掲載誌:Carbon  DOI: https://doi.org/10.1016/j.carbon.2020.10.066
・論文名:Ultra-long carbon nanotube forest via in situ supplements of iron and aluminum vapor sources
・掲載URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0008622320310368

 

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