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遠く離れたマグマ溜まり〜日経サイエンス2020年12月号より

火山の1/3は地下のマグマ溜まりの位置が山体から何kmもずれているようだ

 

火山のマグマが,火口から驚くほど遠く離れた地下の場所に潜んでいる例が新たな研究で示された。これは火山の山腹に設置した計器ではマグマの動きをとらえられない可能性を意味しており,そうした観測では噴火が差し迫っている兆しを検知できない場合がありそうだ。

 

オレゴン大学の火山学者ラーナー(Allan Lerner)らは7月のGeophysical Research Letters誌に発表した論文で,5つの大陸の沈み込み帯(一方の構造プレートが他方の下に潜り込んでいる地質学的に活発な領域)にある56の火山に注目した。他の研究から入手した火山データを集計し,それぞれの火山についてマグマ溜まりの中心位置を推定して,火山の地上部分の推定中心位置と比較した。これらのマグマ溜まりは地表の隆起・沈降の測定や地殻の電気伝導度の追跡を通じて見つかっていたものだ。

 

10 km 以上ずれている例も

研究チームは約1/3の火山がマグマ溜まりから4km以上離れていることを見いだした。うち10km 以上ずれている火山が5つあった(日本とインドネシアにそれぞれ2つ,メキシコに1つ)。「これは驚きだった」とラーナーはいう。マグマ溜まりは火山の直下に位置しているというのが火山学の長年の定見であるからだ。

 

マグマ溜まりの位置がずれている火山の報告例は以前にもあったが,多数の火山について調べたのは今回が初めてだという。サンプル数が増えたおかげで,相関を示すこともできた。比較的小さな火山は大きい火山に比べ,マグマ溜まりが遠く離れている傾向が示された。これは理にかなっているとチームはみる。断層などの地質構造はマグマにとっての障害物コースを地下に作り出すからだ。大きな火山に供給される大量のマグマは十分な熱を携えているので,これら自然の障害物を突き抜けてまっすぐ上ってくるが,小ぶりの火山に伴う小さなマグマ溜まりの場合,マグマは地表まで入り組んだ道筋を進まねばならない。「小さな火山の場合,マグマは既存の地殻構造によって決まる道筋にそのまま沿って上昇することになる」とラーナーはいう。(続く)

 

続きは現在発売中の2020年12月号誌面でどうぞ。

 

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