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渡り鳥は気象予報士〜日経サイエンス2020年12月号より

渡りをうまく実行するために台風の接近を予想している

 

渡り鳥のアジサシは台風の接近を鋭く感じ取り飛行計画を変えているようだ。嵐の直撃を避け,一方では嵐が去った後に残る豊富なエサを利用している。

 

山階鳥類研究所の研究チームは沖縄で6羽のエリグロアジサシに追跡装置を付け,数年間にわたってこの鳥の渡りについて調べた。これらのアジサシはフィリピン海の「台風ハイウェイ」の一角を飛んでボルネオ島やスラウェシ島に渡っていたが,出発時間はいろいろで,大型台風が自分たちの予定コースを通り過ぎるのを待ってから出発しているように見える例が多かった。

 

「アジサシは台風を予想できるようだ」と国立極地研究所のポスドク研究員ティエボ(Jean-Baptiste Thiebot)はいう。彼が主執筆者となった論文は6月のMarine Biology誌に掲載された。アジサシがどのようにこれを予想しているのかについてこの研究は手がかりをあまり示していないが,他の研究から,一部の渡り鳥は天気に関する超低周波の信号を検出したり雲の変化を観察したりすることが示唆されている。

 

台風の異常は渡りに影響?

ティエボが調べたアジサシは台風そのものは回避した。だが台風は海水をかき混ぜてエサとなる魚を海面に巻き上げることがあるので,台風一過の海域は腹をすかせた渡り鳥に助けとなる可能性がある。「アジサシは毎年の渡りを始める時期を知るのに台風を使っているのだろう」とティエボはいう。台風が異常に穏やかだった2017年のシーズンはアジサシの旅立ちの時期が遅くなり,一時休憩の場所に立ち寄らずに飛び続けた。ティエボはもっと大規模な研究でこのパターンを確認したいと考えている。また,台風の発生が近年に増えていることが鳥たちの予想精度に影響し,危険な天候に巻き込まれるのではないかと懸念している。

 

米国地質調査所の野生生物学の名誉研究員ジル(Robert Gill)は,この研究はサンプル数は少ないものの,渡りに関する全体的な理解を深めてくれたと評する。彼は嵐の接近などに基づいて渡りの時期を決めるシギ類を研究してきたが,この行動を深く掘り下げた研究例は一般に少ない。「最も優れた気象予報士よりも渡り鳥のほうが天気をうまく予報できる」とジルはいう。「ただし鳥がこの能力を磨くには長い時間,数百万年とはいわないが,数万年の時を要した」。■

 

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