ハサミムシに収納のヒント〜日経サイエンス2020年10月号より
九大,翅を畳む仕組みの一端解明,日用品やドローンに応用期待
ハサミムシが小さな体に合わせて大きな翅を器用に折り畳む仕組みの一端を九州大学の斉藤一哉講師らが解明した。扇子のように閉じた後,二つ折りにしてさらに小さくするための工夫をしていた。日用品や人工衛星用の太陽電池パネル,羽根が場所をとるドローンの設計に応用できるとみている。
ハサミムシはおしりの先にはさみを持ち,石の下や土の中で暮らしている。翅がある種類とない種類がいる。翅のある種類では,はさみを持ち上げるときに引っかかる翅を硬いさや翅の下にしまっている。空を飛ぶときは,翅を15倍もの大きさに広げる。昆虫の中でも翅を小さく畳むのがうまい。
九大の斉藤講師と英オックスフォード大学自然史博物館や北海道大学,京都大学の国際研究チームは,ハサミムシが翅を開いた様子を観察するとともに,翅が閉じた状態を小型のコンピューター断層撮影装置(CT)で分析した。飛ぶときの翅は扇子のような半円状だが,地上に戻ると扇子のようにいったん1本にまとめたうえで二つ折りにしていた。
人間が使う普通の扇子では,二つに折ると厚みが出てしまう。ハサミムシは折り目をずらし,凹凸がかみ合うようにして厚みを抑えているという。半円状の翅を1本の軸に束ねながら,その軸も同時に曲げ始め,一瞬で収納できる。ハサミムシが翅を小さく折り畳む方法は,簡単な幾何学の法則で説明でき,身近な生活用品を小さく畳む方法の参考になるという。斉藤講師は「例えば傘は完成されたデザインなので形が長らく変わっていない。ハサミムシに学んで変えられたらすごい」と話している。■
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