鉄道総研、超電導を解説 〜筑駒中高生、送電応用に注目
超電導現象を学習する特別講義が2019年12月、筑波大学附属駒場中学校・高等学校(東京・世田谷)で開かれた。鉄道総合技術研究所(鉄道総研)の専門家が現象の仕組みや応用を解説。超電導物質を冷やして超電導現象を実演すると、受講生から歓声が上がった。
鉄道総研は鉄道の世界的な研究機関で、新幹線や超電導現象を応用したリニアモーターカーを開発した歴史を持つ。講師を務めた鉄道総研の富田優研究開発推進部担当部長は超電導物質の開発と応用に取り組んでいる専門家。超電導現象は、超電導物質を冷やして非常に低い温度にすると、電気抵抗がなくなって電気が流れやすくなるとともに、磁力が生じる現象。富田氏は「冷やし続ければ、同じ状態を保てるので、電気を流し続けられるし、磁力も維持できる」と説明した。富田氏は世界最高性能の超電導物質を開発し2003年、英科学誌Natureに発表し世界が注目した。
スムーズな運行や省エネに貢献
富田氏は開発した超電導物質を鉄道の送電システムに応用するアイデアを思いつき、実用化を目指していることを紹介した。鉄道の電車は送電線から送られてくる電気を得て走行しているが、銅などで作られる現在の送電線は電気抵抗があり、電気の一部は熱などになって失われている。富田氏は送電システムの一部に超電導物質製の「超電導送電ケーブル」を導入すれば、電気を失うことなく送電でき、スムーズな運行や省エネにつながると説明。関東の鉄道路線に超電導送電ケーブルを設置して実験していることを紹介した。
講義では、液体窒素で冷やした超電導物質と磁石を反応させて、磁石を宙に浮かせる実験などを披露。受講生からは「超電導ケーブルは長くなっても発熱や電力ロスが生じないのか」「鉄道のほか、日本中の発電所から電気を超電導ケーブルで送るメリットはないのか」といった質問が相次いだ。 ■
(日経サイエンス2020年3月号に掲載)
※所属・肩書きは掲載当時
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協力:日経サイエンス 日本経済新聞社