中高生が学ぶ サイエンス講義

清水建設、都市と環境語る 〜筑駒中高生、防災や共生を考察

 清水建設の技術研究所(東京都江東区)で建築の先端技術を学ぶ特別講義が2019年12月に開かれ、筑波大学附属駒場中学校・高等学校の生徒が参加した。生物多様性を都市部で守る取り組みや地震のビルの揺れを軽減する免震装置など研究所内の施設を見学しながら、これからの建設業が社会に果たす役割について考えた。

 この日の主テーマは都市と環境。林豊主任研究員が講師となり、現在の生物多様性の危機について解説。「地球上で最近は年間4万種もの生物が絶滅している。日本も多様な生物が生息しながら人間の活動で絶滅に瀕した種の多い『ホットスポット』の一つになっている」と指摘し、都市部に自然環境を復元・創出するビオトープの効果などを説明した。

多様性は近隣のビオトープで守る
 研究所には中庭と屋上にビオトープがあり、これまでにアオサギなどの鳥24種類、タヌキなどの哺乳類4 種類、昆虫は約300種類がやってきたのを確認したという。「小さなビオトープでも数が増えれば公園や緑地ともつながり、都市部でも多様な生物が行き来できる環境ができる」と話した。生徒から顧客企業が費用をかけてビオトープを設置する動機について問われると、林氏は「国連の持続可能な開発目標(SDGs)による企業の社会的責任の高まりがビオトープの増加を後押しする」と期待した。

 講義では建物と風の関係を研究する風洞実験設備も見学した。東京・新宿エリアの街並みを忠実に再現した実験用模型は、清水建設が超高層ビルを建設する際に街のビル風の影響を調べるために作製したもの。「シミュレーションや風洞実験で細かい風の動きを知ることができる」と林氏は説明した。

 生徒たちは世界で起きた地震の揺れを再現できる大型振動台装置や研究所建屋の免震構造の仕組みなども見学。世界遺産になっている国立西洋美術館に、外観を損なわず免震装置を施工した耐震技術の解説なども受けた。 ■

(日経サイエンス2020年5月号に掲載)
※所属・肩書きは掲載当時

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協力:日経サイエンス 日本経済新聞社