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HTV-X,自動ドッキングを計画〜日経サイエンス2020年5月号より

JAXAが「こうのとり」後継機の運用計画まとめる 輸送力も向上

 

国際宇宙ステーション(ISS)などへ輸送物資を運ぶ補給機「こうのとり(HTV)」の後継機である「HTV-X」の運用計画を,宇宙航空研究開発機構(JAXA)がまとめた。輸送力を高めて,1号機は2021年度に打ち上げる。2号機はISSに自動でドッキングする実験計画を盛り込んだ。自動ドッキング技術は,米国が中心となって月周回軌道に設けようと構想している新宇宙ステーション「ゲートウェイ」で必要になると考えられており,JAXAは世界に先行して技術を開発したい考えだ。

 

HTV-Xは, こうのとりを上回る輸送力を目指す。運搬可能な物資の重量(貨物重量)はこうのとりの6トンから7.8トンに増強する。容積も60%増やす。打ち上げ間近でも荷物を搭載できるように設計するなど,ユーザーサービスの面も改良する予定だ。

 

また,真空にさらされる非与圧部は機体の先端に配置する。これにより,こうのとりでは不可能だったより大きな装置を搭載できるようにする。打ち上げロケットは,2020年度に初号機を打ち上げる予定の次世代国産ロケット「H3」を採用する計画だ。

 

HTV-Xと競合するのは米国の民間輸送機だ。米テスラの最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏が率いるスペースXの「ドラゴン」や,オービタルATKの「シグナス」が想定されるが,HTV-Xは貨物重量トップで,ライバルに優る。

 

運用では,ゲートウェイなど将来の有人宇宙活動に活用できる技術の開発も必要とされる。重要なものの一つが宇宙船の自動ドッキングだ。現在,ISSにドッキングする際は,ISSや地上からISSのロボットアームを操作してこうのとりをつかみ,ドッキング部分に取り付けている。自動ドッキング技術は,アームの操作なしに機体同士が正確に位置を合わせドッキングする。地球から月へ指令が届くのには時間がかかる。このため,地上から月周回軌道上の補給機を操作するのは難しい。自動ドッキング技術が実用化すれば,無人でも安全にドッキングできるようになり,担当者の負担が軽くなる。(続く)

 

続きは現在発売中の2020年5月号誌面でどうぞ。

 

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