SCOPE & ADVANCE

フェイスブック男女格差〜日経サイエンス2019年1月号より

ソーシャルネット利用の男女差は他の男女格差の代理指標となるようだ

 

ソーシャルメディアは猫の動画や赤ちゃんの写真を伝えるのに加え,有益な人口統計情報をもたらすことがあるようだ。女性によるフェイスブックの使用が男女平等と世界中で関連していることが,最近の調査でわかった。

 

ある研究チームが217の国・地域・自治区におけるユーザー14億人の匿名化データを調べ,ソーシャルネットワークを活発に利用した13~65歳の男女比を計算した。アフガニスタンなど男性利用者に対する女性利用者の比が低い場所は,「フェイスブック・ジェンダーデバイド」が大きいと定義した。また,各国が経済機会と教育,健康でどれほど男女平等であるかを示す世界経済フォーラムのデータを集めた。

 

解析の結果,2015年にフェイスブック・ジェンダーデバイドが小さかった国ほど,翌年に経済的な男女平等が大きく進んだ。対照的に,2015年に経済的男女平等が進んだ国が翌2016年にフェイスブック・ジェンダーデバイドを縮めるという関連は見られなかった。この結果は,フェイスブック・ジェンダーデバイドの小ささは経済的男女平等を促進する要因であって,結果ではないことをうかがわせる。7月の米国科学アカデミー紀要に報告された。

 

一方,英オックスフォード大学の人口統計学者カシャプ(Ridhi Kashyap)は,やはりフェイスブックのデータを利用してインターネット利用の男女格差を調べ,結果を別の地図にまとめて発表した。カシャプはフェイスブック利用に関する男女格差がインターネット利用全般の男女格差を示すよい指標であることを見いだした(後者のデータは入手できない場合が多いので,代理指標は有用だ)。

 

 
インターネットはユーザーに健康と雇用に関する有益な情報を提供できるほか,「スキル向上の優れた手段にもなりうる」とカシャプはいう。米国科学アカデミー紀要に掲載された研究論文の筆頭著者であるウィーン医科大学の計算社会科学者ガルシア(David Garcia)は,フェイスブックのデータは政策立案者が貧困国の男女不平等を推定するのに役立ち,その進化を日次ベースで追跡できるだろうという。■

 

ほかにも話題満載! 現在発売中の2019年1月号誌面でどうぞ。

 

サイト内の関連記事を読む