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「はやぶさ2」リュウグウに到着〜日経サイエンス2018年9月号より

間近で見た小惑星は予想外の姿をしていた

 


IMAGE:JAXA、東京大学、高知大学、立教大学
名古屋大学、千葉工業大学、明治大学、会津大学
国立研究開発法人産業技術総合研究所

探査機「はやぶさ2」が6月27日,目的地である小惑星リュウグウの上空に到着した。地球を発って1302日,総飛行距離は32億kmだった。はやぶさ2は約1カ月半,上空からリュウグウを詳しく観測,地形や物質の分布,重力の状況などを調べ,着陸してサンプルを採取する地点や小型探査機を降下させる場所を8月下旬に選定する計画だ。

 

はやぶさ2は5月中旬,スタートラッカー(姿勢制御に使うカメラ)で進行方向前方の星空を3日間にわたって撮影,約5等星の明るさのリュウグウが恒星の間を移動する姿を捉えた。その時点でのリュウグウまでの距離は約7万km。得られた情報をもとに飛行ルートを修正し,イオンエンジンを噴射して惑星間飛行を続けた。

 

約3100kmまで迫った6月3日にイオンエンジンの運転を終了。以降,ほぼ毎日のようにリュウグウをカメラで撮影して位置を確認しつつ,スラスタ(小型ロケットエンジン)を噴射し,リュウグウとの距離を詰めていった。そして6月27日,リュウグウ上空約20kmに到達,以来,7月中旬現在までこの距離を維持しつつ,リュウグウとともに太陽の周りを回っている。

 

現在,はやぶさ2とリュウグウは太陽を挟んで地球とは反対側にあり,地球からの距離は約3億km(太陽・地球間距離は1.5億km)。地球から指令を電波で送って探査機に届くまでに17分近くかかる。リュウグウの公転軌道半径は約1億8000万km,公転周期は約1.3年で,地球と火星の間をほぼ動いている。はやぶさ2の総飛行距離が30億kmを超えたのは,太陽を公転しつつ,リュウグウを追いかける飛行ルートをとったためだ。

 

「(到着までの)1カ月間,20kmという宇宙スケールでいえば非常に小さな距離で小惑星に横付けしなければいけないということで,慎重な運用を続けてきた」とプロジェクトマネージャを務める宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所の津田雄一准教授は到着当日,同研究所(神奈川県相模原市)で開かれた記者会見で述べた。イオンエンジンで巡航している間,少ない場合は数人程度で探査機を管制していたが,最後の1カ月間はかなりの大人数で管制に取り組んだという。(続く)

 

続きは現在発売中の2018年9月号誌面でどうぞ。

 

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