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米国北東部の地下で…〜日経サイエンス2018年6月号より

2億年も地質活動がなかった地域で高温の岩石が上昇中

 

過去2億年間,米国北東部ニューイングランド地方は激しい地質変化がない場所だった。火山活動も大地震もほとんどなかった。しかし現在は目覚めの一歩手前なのかもしれない。

 

1月のGeology誌に発表された研究は,アパラチア山脈北部の地下で高温の岩石が泡のように上昇していることを示している。この特徴は米国全土に配置された数千台の地震計の集合体「アーススコープ」によって2016年に初めて検知された。ラトガーズ大学の地球物理学者レビン(Vadim Levin)は,天文学者がハッブル宇宙望遠鏡で遠い夜空を見つめることができるように,地球科学者はこの多数のセンサーによって北米大陸の地下をのぞき見ることができるという。焼けつく岩石が地表を突き破れば(その可能性はあるが数千万年先のこと),ニューイングランドはブクブクと泡立つ火山地帯に変わるだろう。

 

 

プレート境界ではないのに

この発見は多くの疑問を呼んだ。何しろニューイングランドは活動中のプレート境界(プレートどうしが衝突して擦れ合う場所)に位置してはおらず,北米プレートの真ん中にあるのだ。例えば高温岩石の泡がどこで生まれているのか,正確なことは不明だ。北米大陸の端はプレート境界近くのプレートよりも温度が低いため,レビンはこの低温部分がマントルを冷やしているのだろうとみる。

 

マントルは地殻のすぐ下の層で,地球の核に向かって伸びている。冷やされたマントルの塊が沈むと,温度の高い部分が強制的に立ち退かされ,それが地表に向かって上昇してくるだろう。アーススコープがとらえたのはそうした上昇だと考えられている。単純明快に聞こえるが,このシナリオは「いまのところ教科書に記載されるような定着した話ではない」とレビンはいう。

 

あるいは,北米大陸のいくつかの部分がちぎれてマントルに沈み込んでいるのかもしれないとコロンビア大学の地球物理学者メンケ(William Menke,今回の研究には加わっていない)はいう。この場合も高温のマントルが押し上げられるだろう。(続く)

 

続きは現在発売中の2018年6月号誌面でどうぞ。

 

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