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オマーンで古代のマントルを掘削〜日経サイエンス2017年11月号より

海底マントル掘削の予行演習を兼ね,「ちきゅう」船上でコアが分析された

 

アラビア半島オマーンの山岳地帯を構成する陸塊は,約1億年前には海底にあった。その後の地殻変動で,海洋地殻とその下のマントルが地表に出ている,世界でも珍しい地域となった。この地で日本を含む国際共同グループが進めてきた地殻とマントルの掘削調査が本格化している。

 

掘削では,長いパイプの先に付けたドリルを用いて,コアと呼ばれる直径約10cmの細長い岩石サンプルをくり抜く。今回の調査は昨冬から始め,これまでに総計1500mのコアを得た。7月半ば,このコアを日本の静岡県清水港に停泊している海洋研究開発機構の地球深部探査船「ちきゅう」に運び込み,分析した。

 


日経サイエンス

深海底を大深度掘削する施設を備えたちきゅうは,掘削したコアを様々な手法で分析できる第一級の研究施設でもある。X線CTや蛍光X線分析装置,超電導磁力計などを揃える。今回持ち込んだコアには,約1億年前,海底下20kmより深いところにあったマントルの岩石も含まれている。いわばマントルの化石だ。

 

ちきゅうでは日米欧など80人以上の研究者が,岩石や鉱物の組成,コアに見られる断層や割れ目などの状況を2カ月間24時間体制で調べ,データベース化した。今後,この情報をもとに研究者らは興味がある部分の試料を取り,自国の大学や研究所に持ち帰って本格的な分析に取り組む。

 

陸に乗り上げた海洋プレート

オマーンの山岳地帯をつくった海洋プレートが形成された1億年前は,恐竜が闊歩していた中生代白亜紀だ。当時,アフリカ大陸とインド半島は現在よりはるか南方にあり,ユーラシア大陸との間にはテチス海という広大な海洋が存在していた。その名残が地中海や黒海,カスピ海などだ。アラビア半島北東部にあるオマーンは,幅100~300kmのオマーン湾を挟んでイランと向き合っているが,1億年前,アラビア半島はアフリカ大陸とともにはるか南方にあり,オマーンとイランの間にもテチス海が広がっていた。(続く)

 

続きは現在発売中の2017年11月号誌面でどうぞ。

 

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