プラスチックを食べる虫〜日経サイエンス2017年10月号より
ハチノスツヅリガの幼虫はポリエチレンを食べて分解する
世界で毎年3億トン以上のプラスチックが生産されている。そのほぼ半分がゴミ埋め立て処分場に行き着き,1200万トンは海を汚染している。いまのところプラスチックなしですます持続可能な方法はないが,最近の研究は,ある種の腹ペコな虫の胃袋に解決策が隠れている可能性を示している。
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スペインと英国の研究チームはこのほど,ハチノスツヅリガ(オオハチミツガ)の幼虫がポリエチレンを効率的に分解できることを発見した。ポリエチレンはプラスチックの40%を占める主流だ。このガの幼虫100匹を商用のポリエチレン製レジ袋の上に置いて様子を見たところ,12時間でポリ袋の重量の約3%にあたる約92mgを食べて分解した。
幼虫がポリエチレンを単に噛み砕いただけではないことを確認するため,一部の虫をすりつぶしてペースト状にし,それをプラスチックフィルムに塗った。すると14時間後にフィルムの重量は13%減った。おそらく,虫の胃にあった酵素によって分解されたと考えられる。
また,分解されたフィルムを精査した結果,少量のエチレングリコールが見つかった。これはポリエチレンが分解してできる物質であり,実際に生分解が起きていることを示している。先ごろのCurrent Biology誌に報告。
分解酵素を突き止めろ
スペインのカンタブリア・バイオ医学生物工学研究所の生物学者でこの研究論文を共著したベルトッキーニ(Federica Bertocchini)は,この幼虫は主食の蜜蝋を分解しているのでプラスチックも分解できるのだろうという。「蜜蝋は各種分子の複雑な混合物だが,ポリエチレンの基本骨格である炭素-炭素結合がそこにも含まれている」と説明する。「ハチノスツヅリガはこの結合を分解するメカニズムを進化させた」。(続く)
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