ピザ職人ロボット修行中〜日経サイエンス2017年8月号より
とても器用なロボットがデビュー待ち
ピザには深夜の実験室作業の燃料源としての誇り高き歴史があり,ピザで有名なイタリアのナポリの科学者は世界で最もおいしいピザを容易にテイクアウトできる。だが,工学者のシチリアーノ(Bruno Siciliano)を触発したのはピザを食べることではなく,むしろどう作るかだ。
「ピザの準備には桁外れの機敏さと器用さが必要だ」とナポリ大学でロボット工学の研究グループを率いるシチリアーノはいう。ピザ生地の塊など変形しやすい物を延ばすには,正確に優しく触れる必要がある。人間にはできてもロボットには不可能な数少ない作業の一例だ。いまのところは。
シチリアーノのチームは,生地をこねて延ばすところから具を載せて窯に滑り込ませるまで,手早くピザを作り上げる敏捷性を備えたロボット「ロディマン(RoDyMan)」を開発している(名称は「Robotic Dynamic Manipulation」から)。欧州研究会議(ERC)から250万ユーロの助成金を得て進めている5年計画のプロジェクトだ。
ロディマンは人間のシェフと同じく,生地を空中に投げ上げて延ばし,その回転を目で追いながら,形がどう変わるかを予測しなければならない。2018年5月に開かれる伝説的なナポリ・ピザ・フェスティバルでデビューすることになっている。
ピザ名人に学び,自分で訓練
ロディマンはいま,あるワザの習得に向けて特訓中だ。それは「生地を破らずに延ばすこと」。ロボットを手引きするため,研究チームは熟練のピザ職人コッチャ(Enzo Coccia)に運動追跡センサーを組み込んだ服を着てもらった。「コッチャの動きを学習して,ロディマンにまねさせている」とシチリアーノはいう。(続く)
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