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赤子の脳が覚えている言語〜日経サイエンス2017年7月号より

最初に接した言語の記憶が意識下に保存されているようだ

 

生まれて最初に接した言語の影響が,大人になった後も,その言語を話しもせず理解もしていないのに,ずっと残っている可能性が最近の研究で示された。また,そうした初期の経験がある場合,成人後にその言語を再び学習する際に習得が速くなるようだ。

 

Royal Society Open Science誌に先ごろ発表されたこの研究では,オランダの成人に韓国語の音の相違を聞き分ける訓練を課した。被験者は韓国語にまったく接したことがないと自己申告した人たちと,韓国生まれだが6歳前にオランダ人家族の養子になった人たちだ。被験者はみな韓国語を話せないが,韓国からの養子のほうが音の相違をうまく聞き分け,韓国語の発音も正確だった。

 

「意識上にその言語の記憶がなくても,言語学習が意識下に保存されている可能性がある」と,韓国のソウルにある漢陽大学校のポスドク研究員で研究論文の主執筆者となったチェ(Jiyoun Choi)はいう。しかも,幼少期に少し言語に触れただけで後の学習に役立つらしい。チェらが生後6カ月前に養子になった人たちと生後17カ月以降に養子になった人たちの結果を比較したところ,ヒアリングやスピーキングに差はなかった。

 

「生後6カ月以前に韓国語に触れただけの成人にもこうした効果が認められたのは非常に興味深い。この時期は喃語(なんご)すら話し始めていないのに」と,加ブリティッシュコロンビア大学の心理学教授ワーカー(Janet Werker,この研究には加わっていない)はいう。しゃべり始める前に覚えたことが何十年も残っているというのは驚きだ。■

 

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