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ブラックホール連星の起源に新説〜日経サイエンス2016年10月号より

重力波の源は宇宙誕生直後にできた原始ブラックホールかもしれない

 

昨年9月,史上初めて直接検出された重力波は約14億光年彼方でブラックホール連星が合体した際に放出されたものだが,こうしたブラックホール連星の起源に関する新説が提唱された。約138億年前の宇宙誕生直後,密度が非常に大きい場所で大質量ブラックホールが同時多発的に生じ,それら「原始ブラックホール」どうしの重力相互作用でブラックホール連星が形成されたとする説だ。東京大学ビッグバン宇宙国際研究センターの須山輝明助教を中心とするグループが8月2日付の米Physical Review Letters誌オンライン版で発表した。

 

米国にある重力波望遠鏡LIGOが昨年9月から今年1月にかけてブラックホール連星の合体で生じた重力波を2回捉えた。特に注目されたのは1回目の9月14日の重力波。発生源となった連星を構成するブラックホールの質量が太陽の30倍(30太陽質量)程度だったからだ。通常,大質量星の超新星爆発で形成されるブラックホールは10太陽質量程度がほとんど。どのようにして30太陽質量ものブラックホールが生じ,それが連星となったのかは大きな謎だ。

 

現在,提唱されている説の1つは,宇宙誕生から数億年後に誕生した第1世代の星(初代星)を起源とするものだ。初代星の母体になるガスは,超新星爆発による重元素の供給が始まる前のものなので,宇宙誕生時に生じた水素とヘリウムがほとんど。こうしたガスから生じた初代星は,後の時代に誕生した星よりも巨大化し,ガスをあまり放出することなく超新星爆発に至るので約30太陽質量のブラックホールが形成されうる。

 

シミュレーション研究によると,初代星がいくつかのプロセスを経て超大質量ブラックホール連星を形成し,それが合体して重力波を発生する頻度は,LIGOの観測から推定される頻度と合致する可能性がある。

 

宇宙誕生直後,同時多発的に誕生

これに対し今回の新説は初代星のような天体起源ではなく,原始ブラックホールからなるブラックホール連星だ。その形成シナリオは次のようなものだ。(続く)

 

続きは現在発売中の2016年10月号誌面でどうぞ。

 

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