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集中しているか退屈か?〜日経サイエンス2016年7月号より

パソコンはあなたの状態を識別可能

 

 退屈はあくびやうつろな目に表れるだけではない。身をよじる,掻く,向きを変えるなど「非インストゥルメンタル運動」と呼ばれる微妙な身体の合図も人の精神状態を表す。そしていま,教師や講演者と同様に機械も,こうした落ち着きのないサインを検知できるようになった。最近の研究によって,コンピューターユーザーが画面上のデータに注意を向けているときにはそわそわした動きが少なくなることがわかった。そしてコンピューターはこの情報を用いて,ユーザーの集中度をリアルタイムで識別できる。

 

 英サセックス大学の精神生物学者ウィチェル(Harry Witchel)らは関心度を測るため,27人の被験者にコンピューターの視覚システムが追跡できるモーショントラッキング標識を身につけてもらった。次に被験者たちは,英国の作家マーク・ハッドンの小説『夜中に犬に起こった奇妙な事件』と欧州銀行監督局の規則からそれぞれ抜粋した文章をパソコン上で読んだ。コンピューターは頭と胴体,足の動きに基づいて,当人が「心ここにあらず」の状態にあるかどうかを識別できた。実際,時間中の累積動作の解析により,小説を読んでいるときは銀行の規則を読んでいるときに比べ,そわそわした動きが50%近く少ないことが明らかになった。

 

 Frontiers in Psychology誌に報告されたこのシステムは,発展しつつある「感情認識技術」の研究の新たな例だと,ロンドン大学ユニバーシティカレッジのコンピューター科学者ベルトウーズ(Nadia Berthouze)はいう。ウィチェルは,このプログラムが完成したら教育者たちはそれを利用して,学生の注意力低下を認識すると再び注意を喚起する方策を講じるデジタル授業を作成できるだろうと考えている。また,人間にもっと繊細な対応をするロボットを作るのにも役立つ可能性がある。■

 

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