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エクソマーズ火星へ〜日経サイエンス2016年5月号より

欧州とロシアが3月に“先遣隊”を打ち上げ

 

火星は文字通りの意味でも比喩的にも,無人探査機の墓場となっている。これまでに26のミッションが,火星に到達できなかったか着地に耐えられずに終わった。だが,それでも新たな挑戦意欲は衰えなかった。さてお次は? 欧州宇宙機関(ESA)がロシアの国営ロスコスモス社と共同で,非常に意欲的な火星探査ミッション「エクソマーズ」の第一陣を3月に打ち上げる。

 

同計画は2つの独立した旅からなる。今回旅立つのは火星周回探査機と着陸実験モジュールで,ともにロシアのプロトン・ロケットに搭載されてカザフスタンのバイコヌール宇宙基地から打ち上げられる。これらは2018年打ち上げ予定の探査車の先遣隊として働く。

 


Image:ESA

 

探査車を迎える準備を整えるため,周回機と着陸モジュールのコンビは数多くの目標を達成しなければならない。例えば着陸モジュールは搭載コンピューターやレーダー高度計,パラシュートといった重要な着陸技術をテストする。一方の周回機は,これまで火星に送られた宇宙船のなかでは最大で,高度400kmの軌道で火星を周回し,過去または現在の生命の存在を示す可能性があるメタンなどの気体を探す。周回機はまた,火星の地表下に隠れた氷を探索するほか,探査車の到着後は地球との交信を助ける。

 

生命探しのホームランバッター

総合的に見ると,火星に生命が存在していたかどうかを示す証拠の収集でエクソマーズが“ホームラン”を放つ可能性があると,米航空宇宙局(NASA)の「火星2020」ミッションの調査科学者を務めるウィリス(Peter Willis)はいう。探査車は深さ2mという記録的な掘削能力を持ち,採取試料に含まれる生物学的な特徴を検出するためにこれまでで最も高感度の計器類を携行する予定だと,エクソマーズのプロジェクト科学者ヴァーゴ(Jorge Vago)は説明する。「火星に生命が存在したことがあるなら,エクソマーズの探査車はその生物学的な名残を実際に検出する初の機会になるだろう」という。■

 

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