「あかつき」金星周回軌道に〜日経サイエンス2016年2月号より
5年目の再挑戦で成功,金星大気の謎に挑む
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は去る12月7日,探査機「あかつき」の金星周回軌道への投入に成功した。ちょうど5年前に軌道投入を試みたが,主エンジンの不具合で失敗。以来,金星より少し内側の公転軌道を回りながら再挑戦の機会を待っていた。「あかつき」は金星の気象衛星で,謎が多い金星大気の動きを詳しく調べる。軌道投入の5時間後に試し撮りした画像で金星の雲の温度分布に未知のパターンが発見され,新たな謎の存在も浮かび上がった。
日本は探査機「かぐや」「ひてん」を月周回軌道に,「はやぶさ」を小惑星イトカワの周回軌道に乗せた実績があるが,惑星周回軌道投入は初めてだ。1998年打ち上げの火星探査機「のぞみ」は地球の重力を利用して加速する地球スイングバイの際,より大きな加速を得ようとエンジンを噴かせたが,不具合で十分な噴射ができず,火星到達を1999年から2003年に延期。その後も様々なトラブルに見舞われ満身創痍となりながら飛行を続けたものの,2003年12月,火星到達目前で火星周回軌道投入を断念,約1000kmまで火星に接近した後,飛び去った。それから12年,日本は惑星探査の大きなステップを上がることができた。
「あかつき」も苦難の道のりだった。2010年5月に打ち上げられ,同年12月8日,金星重力圏に入るため主エンジンを逆噴射して減速し始めたが,12分間噴き続ける予定に対し,3分足らずで停止した。原因調査の結果,「あかつき」は飛行を続けるうち,気化した酸化剤がタンクから配管内を想定量以上逆流したため,弁の1つが動かなくなり,主エンジンを噴射し始めると異常燃焼が起きて噴射ノズルが脱落したことが判明した。軌道投入失敗後に主エンジンを試験噴射したが推力をほとんど生み出せず,使用不能になったことがわかった。(続く)
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