サルが常用する薬〜日経サイエンス2016年1月号より
樹皮を食べるのは病気を治すためらしい
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サルが鼻風邪をひいたり頭痛になったりしても,薬棚から解熱鎮痛剤を取り出して飲むぜいたくはできない。野生の世界でサルたちは風邪や咳をどのように治しているのだろうか。
ジョージア大学の生態学者ガイ(Ria R. Ghai)らは,ウガンダのキバレ国立公園でアカコロブス(サルの一種)の100頭以上の集団を4年間観察し,雨林が解熱鎮痛剤の代わりになるものを提供しているかどうかを調べた。
この結果,鞭虫(べんちゅう)が感染したサルは休んでいる時間が長く,動いたり毛づくろいしたり交尾したりする時間が短いことがわかった。また食事の時間や回数は同じなのに,感染サルは健康なサルに比べて樹皮を食べる量が2倍に達した。去る9月のProceedings of the Royal Society B誌に報告。
樹皮を食べると,その繊維質がサルの消化管から寄生虫を文字どおり掃き出してくれるのかもしれないが,ガイはもっと説得力のある理由を考えている。病気のサルが好んで食べた9種の樹木・低木のうち7種は,滅菌や鎮痛などの薬理効果があることが知られているものだった。つまり,サルは自分で治療している可能性がある。他の可能性も否定できないものの,病気になったサルは地元の人々が寄生虫感染などの病気になった時に使うのとまさに同じ植物を使っていた。「単なる偶然とは思えない」とガイはいう。■