SCOPE & ADVANCE

耳寄りな発見〜日経サイエンス2015年8月号より

哺乳類と爬虫類・鳥類は独自に鼓膜を獲得した

 

by Alberto..

人間をはじめとする哺乳類と爬虫類・鳥類とで,鼓膜(音波を内耳に伝えている膜)がなぜこうもよく似ているのか,進化生物学者はかねて頭を悩ませてきた。これらの生物の鼓膜ひいては聴覚は,共通祖先から進化したのだろうか? それとも,それぞれ独立に進化したのだが,同じ機能を達成すべく結果として同じ形になった「収斂進化」なのか?

 

東京大学と理化学研究所・形態進化研究室が実施した最近の実験によって,この長年の問題が決着した。

 

研究チームは遺伝子操作によって,マウスの胎児とニワトリの胚に下顎が発生しないようにした。この結果,マウスは鼓膜も外耳道も形成されなかったが,ニワトリの胚は左右の上顎が発達し,そこからそれぞれの鼓膜と外耳道が発生した。

 

Nature Communications誌に報告されたこの結果は,哺乳類においては中耳が下顎から発生するのに対し,鳥類では上顎から出現することを確証している。つまり,哺乳類と爬虫類・鳥類で同じ聴覚系の構造が独立に進化したとする仮説を裏づけている。

 

これまでも聴覚器官の骨の化石を解析した研究がこの説を支持していたが,鼓膜は化石に残らないので直接には検証できなかった。ヒヤヒヤ(Hear,hear),遺伝子技術はすごい!■

 

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