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親の過干渉の弊害〜日経サイエンス2015年3月号より

子供の対人関係構築を害する恐れあり

 

 散らかったままの部屋や手つかずの宿題からわかるように,子供には指導が必要だ。だが,親が命ずる仕方は子供の社会的スキルに強く影響する可能性がある。バージニア大学の心理学者たちが思春期から成人に移行する難しい年頃を調べた最近の研究から明らかになった結論だ。

 

 この調査研究ではまず,13歳の子供184人にいくつかのアンケートに答えてもらい,親が当人を心理的にコントロールする方法(罪の意識を誘導したり,もう構ってやらないと脅したりするなど)をどれくらいの頻度で使っていたかを評価した。例えば父親が子供に「お前が本当にパパのことを思っているなら,パパを心配させるようなことはしないはずだ」と示唆するとか,母親と自分の意見が食い違うと母親が不機嫌になる例がどれほど多いかを評定してもらった。

 

 その後,この子供たちが18歳と21歳になった時点で追跡調査を行った。親しい友人か,もしいれば恋人を連れて来てもらい,その2人に,意見が割れるように意図的に作った仮想の質問に答えてもらった。「意見の不一致を健全な方法で解決できるかどうかを見るのが狙い」と,この研究を率いたオードカーク(Barbara Oudekerk,現在は米司法省統計局に所属)は説明する。

 

不一致を受け止められず

 Child Development誌10月号に発表された結果によると,統制的な親を持つ13歳の子供は18歳になったとき,友人との意見の不一致をうまく受け止められずに苦しんだ。親が統制的ではない子供と比べ,自分の意見を堂々と合理的に主張するのが苦手だった。さらに,自分の意見を主張した場合も,温和で建設的な方法で表現できないことが多かった。

 

 親が過干渉だと,子供が自分の意見を親以外の人に主張する適切な方法を学ぶ力が損なわれるのではないかと研究チームは考えている。親はしていいことと悪いことの区別を教える必要はあるものの,強圧的なやり方は,意見が少しでも違うと友好の絆が損なわれるのだと思わせてしまう。(続く)

 

続きは現在発売中の3月号誌面でどうぞ。

 

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