プールでおしっこするな!〜日経サイエンス2014年10月号より
危険です,マジに
この夏,私たちの5人に1人は常識はずれのことをするだろう。プールのなかでおしっこすることだ。
だが,このだらしない行為は汚いだけではすまされない。ごく少量ではあるが,有毒な化学物質を生み出すのだ。「プールの水は塩素を含んでいるからおしっこしても大丈夫と思っている人がいるが,まったくの大間違い」とパデュー大学の化学工学者ブラッチリー(Ernest Blatchley)はいう。プールにおける塩素の仕事は殺菌であって,身体機能を引き受けることではない。
塩素が尿酸と反応して…
実際,塩素は尿酸と容易に反応する(尿酸は窒素を含む化学物質で,名前の通り尿に含まれる)。この結果,塩化シアン(CNCl)と三塩化窒素(NCl3,トリクロロアミン)ができる。これらは潜在的に有害で,ブラッチリーが過去10年間に調べたプールすべてに存在していた。Environmental Science & Technology誌に報告された彼の最新の研究では,これらの化合物の生成に使われた尿酸の93%が人間の尿に由来するものだ(尿酸は汗にも含まれる)。
そして,米環境保護局(EPA)の許容濃度を超える塩化シアンと三塩化窒素を作り出すのに大量の尿はいらない。過去の調査で,水泳大会の後にはプールの三塩化窒素の濃度が4倍になることがわかっている。また,水泳選手や監視員のようにプールで三塩化窒素と塩化シアンに頻繁にさらされる人は喘息などの呼吸器疾患になる可能性が高い。ただし,この関連性を確かめるにはさらに研究が必要だ。
だからお願い,プールでおしっこはしないで。■
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