終わらないSTAP問題
理研は小保方氏の不正を認定する一方,疑義の全貌解明には尻込み
日経サイエンス |
5月8日,理化学研究所再生・発生科学総合研究センター(CDB)の小保方晴子研究ユニットリーダーの不服申し立てを却下し,同士がSTAP細胞論文の作成において不正を行ったと結論した。調査は外形的に不正の判定が可能な6項目に絞り込み,3月末に異例の速さで不正を認定したが,その後小保方氏自身によって実験ノートの一部が公表され杜撰さが明らかになるなど,論文全体への不信はさらに膨らんでいる。STAP現象を「合理的な仮説」とした笹井芳樹CDB副センター長の説明も,論拠を失いつつある。
疑義の指摘は増えるばかりだが,理研は論文全体の調査には一貫して消極的だ。8日の会見では研究担当の川合眞紀理事が「やらざるを得ないときは放置しておくつもりはないが,プライオリティーは下がっている」との見方を示した。
笹井氏がSTAP細胞が「合理的な仮説」であるとした最大の論拠は,STAP細胞から作成したキメラマウスが,胎児だけでなく胎盤になったことだった。だがこの点にも疑義が残る。マウスは若山氏が作成したが,若山氏自身は,作成に用いた細胞が胎盤特有の組織になったことを直接確認はしていない。確認したという小保方氏の報告に「納得してしまった」と話している。また丹羽氏は自身で標本を確認したと会見で語ったが,その標本の作成者は小保方氏だった。
笹井氏はSTAP細胞が胎盤になったことは,Nature誌に掲載された2本の論文のうち,今回不正の指摘を受けなかったレター論文に掲載されていることから「疑義は晴れたと理解している」と述べた。だが調査自体が行われていないので,その主張は当たらない。
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