SCOPE & ADVANCE

シャーレに生える毛髪〜日経サイエンス2014年5月号より

実験室育ちの毛で育毛剤をテスト

 

 英国にいる細胞生物学者のトービン(Desmond Tobin)は毎日,美容整形手術を受けた患者から臓器を採取している。ただし彼が求めているのは腎臓など人体に必須の臓器ではない。集めているのは,顔の皮膚を引き上げるフェイスリフト手術の際に耳の後ろから切り取られた皮膚だ。そこに毛髪を作り出す小さな“臓器”,毛包が含まれている。

 

 トービンは英ブラッドフォード大学皮膚科学センターで慎重に毛包を抽出し,シャーレのなかで人間の毛髪を成長させている。これを利用すれば,化粧品メーカーは実験動物に頼らずに育毛剤やスキンクリームなどの新製品の有効性を試験できる。ロンザ・コンシューマーケア社で研究開発を統括するグルーバー(James V. Gruber)はそうした試みを昨年12月の化粧品化学協会(SCC)の年次大会で報告した。

 

 グルーバーによると,脱毛治療に効果が期待できる分子が2種類ある。ある酵母ペプチドは毛包の細胞老化(増殖を停止して長期休眠に入った状態)を逆転させるようだ。また,抗酸化物質のイソフラボンはコラーゲンとエラスチンの濃度を上げ,毛包を支えている皮膚を強化する。

 

 トービンとグルーバーはこれまで,化学処理で強制的に細胞老化状態にした毛包を用いてきた。次の課題は,自然に休眠状態に向かいつつある毛包を活発化できるかどうかだ。■

 

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