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チクングニア熱接近〜日経サイエンス2014年5月号より

蚊が媒介する厄介なウイルスが西半球に侵攻中

 

James GathanyーCDC

 デング熱とチクングニア熱はともに蚊が媒介する病気だが,かかるならどちらを選ぶかと聞かれたら,ほとんどの人がデング熱を選ぶだろう。どちらの病気にもワクチンも治療法もないが,チクングニア熱のほうがはるかに苦しい。

 

 高熱と激しい関節痛を引き起こすこの病気は,かねてアフリカと南アジアで問題になってきた。「チクングニア」はアフリカ南東部のマコンデ族の言葉で「折れ曲がるもの」を意味し,患者が痛みで身を折り曲げる姿勢を表している。

 

 この病気のウイルスが米国に近づきつつある。世界保健機関(WHO)は最近,カリブ海のセント・マーチン島でチクングニア熱が集団発生したと報告した。西半球で初めての発生だ。1月初旬時点で,島内で99人の患者が確認されており,カリブ海の別の島でも少数の例が見られる。米疾病対策センター(CDC)はこのウイルスが数カ月から数年のうちに他の島や米国本土に広がる恐れがあると警告している。この地域と行き来する観光客の流れも,米国内での流行のリスクを高めている。

 

旅行者がウイルスを持ち込んだ?

 チクングニアウイルスがどのようにセント・マーチン島に到達したかはわかっていない。最初期に診断された患者たちは発病前のしばらくは島の外に出ていなかったので,地元で感染した可能性が高い。世界のどこか別の地域でこの病気に感染した旅行者がセント・マーチン島にウイルスを持ち込み,地元の蚊によって広がったという見方が有力だ(チクングニアウイルスを広めるのはネッタイシマカかヒトスジシマカのメスで,感染者の血を吸った後に別の人を刺すと広まる)。また,可能性は低いものの,感染した蚊が船や飛行機に紛れ込んで島にやってきたのかもしれない。

 

 「この島にチクングニアウイルスを媒介できる蚊がいることはわかっている。疑問は,なぜ1年前でも1年後でもなく,いま発生したのかだ」とCDCの昆虫媒介性疾患の専門家ステープルズ(Erin Staples)はいう。「たまたま条件がそろったのだろう」。■

 

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