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キノコの胞子飛ばし術〜日経サイエンス2014年4月号より

風まかせではなく,自分で気流を作り出している

 

 生物学では,キノコは可能な限り多くの胞子を作り出すだけの単純な生物として軽んじられてきた面がある。それらの胞子がどこまで遠く広がるかは,気まぐれな風しだいだと思われていた。しかし詳しく観察したところ,もっと複雑な仕組みが見えてきた。

 

 「キノコは生物学における暗黒物質(ダークマター)だ」とカリフォルニア大学ロサンゼルス校の数学者ローパー(Marcus Roper)はいう。「宇宙の暗黒物質と同様,キノコも至る所にあるのに,ほとんど調べられていない」。

 

 ローパーらは高速ビデオ撮影と数理解析を用いて胞子が分散する様子を調べ,風がなくても胞子が広がる仕組みに迫った。実際,キノコが自分で気流を作り出していることを突き止め,最近開かれた米国物理学会の流体力学部会で報告した。

 

蒸発冷却を利用

 キノコは「蒸発冷却」を利用して空気流を作り出している。胞子の分散が始まる直前に,キノコの表面についた小さな水滴が蒸発し,この水蒸気が胞子を持ち上げて積極的に分散させている。

 

 この新発見は「日陰者のキノコに複雑さが隠されていることを思い知らせてくれる」と,オハイオ州にあるマイアミ大学の生物学者マネー(Nicholas Money)はいう。「これは古代の進化工学が生んだ素晴らしい実例だ」。■

 

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