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コーンスターチの手品〜日経サイエンス2014年4月号より

「ずり粘稠化」の一端が明らかに

 

 少量の水を加えたコーンスターチは特殊な振る舞いをする。一見すると他の液体と同じで,容器から別の容器に注ぐこともできるし,なかに手を浸すこともできる。ところが強く握るか液面を強くたたくかすると,どろどろのスラリーが急に固まる。丸めてボールにしたり,その上を歩いたり跳ね回ったりもできる。

 

 「ウーブレック」とも呼ばれるこうした混合物を勢いよくかき回すと,石のように固くすることも可能。エール大学の物理学者ブラウン(Eric Brown)は,コーンスターチと水を金属棒でかき混ぜて,その奇妙さを実演するのがお好みだ。力を入れすぎて棒を折ってしまったこともあるという。さらに奇妙なことに,この遷移は可逆で,攪拌を緩めると固体のように見えたものが液体に戻る。

 

 この液体・固体間の急速な移行は「ずり粘稠化」として知られ,物理学者たちはそれを完全に説明しようと長らく奮闘を続けてきた。2003年,ついにフランスの実験チームが,ずり粘稠化が粒子間の摩擦の副産物として生じることを示す最初の手掛かりをつかんだ。

 

潤滑と摩擦

 さらに最近,粒子の相互作用の詳細なシミュレーションによってこの見方が確かめられた。コーンスターチの濃度が低い場合,液体が粒子の潤滑剤として働き,粒子はある程度自由に動くことができると,この現象に関する新研究の論文をPhysical Review Letters誌に共著したニューヨーク市立大学の化学工学教授モリス(Jeffrey Morris)はいう。スターチの量を増やしても,誰かがちょっと強くかき回さない限り,水が「ほぼ完璧な潤滑剤となる」。

 

 しかし力が加わると,浮遊していた粒子が互いにぶつかり,粒子の表面が粗いために引っ掛かって,滑らかに動かなくなる。粒子は摩擦力によって互いに支え合い,長くて固い鎖を形作る。このため,ずり粘稠化を起こした流体に固体に近い感触が生まれるのだと,論文の主著者で同じくニューヨーク市立大学の瀬戸亮平(せと・りょうへい)は説明する。

 

 物理の「ごく基本的な疑問」に答えを出すために無数の実験と理論研究を要したという点で,「ずり粘稠化は非凡な例だ」とモリスは指摘する。ほかにも多くの疑問が残っているとブラウンはいう。例えば,ずり粘稠化を生じる微視的な相互作用がウーブレックの耐衝撃性のもとになっているのかどうかは,まだ明確ではない。■

 

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