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内殻電子で化学結合〜日経サイエンス2014年4月号より

高圧下では風変わりな分子が生じるらしい

 

 多くの人は高校の化学で,原子核の周囲の電子は異なるエネルギー準位を占めていると教わったはずだ。内側の電子殻は低いエネルギー準位であり,最も高いエネルギー準位は最外殻となる。化学結合は原子が最外殻の電子を共有または交換するときにのみ生じると教わった。

 

 ところが,このおなじみの規則に抜け穴が見つかったようだ。非常に高い圧力の下では,原子の内殻にある電子も化学結合に加わることがあるらしい。

 

 「内殻電子は決して反応せず,化学の領域に決して入ってこないというこれまでの教義が崩れる」と,カリフォルニア大学サンタバーバラ校と中国・北京計算科学研究センターの化学者ミャオ(Mao-sheng Miao)はいう。ミャオは,非常な高圧下ではセシウムとフッ素の原子が内殻電子で結合した風変わりな分子を形成しうることを計算で示した。

 

3フッ化セシウムと5フッ化セシウム

 通常,原子は比較的単純な化学結合を形成する。アルカリ金属のセシウムは外殻に1個の孤独な「価電子」を持っている。これに対しハロゲンガスのフッ素は,外殻を完全に埋めるには電子が1つ足りていない。このため,供与可能な電子を1つ持つセシウムのような原子とぴったりマッチする。

 

 しかしミャオは,セシウムの内殻電子も結合に関与しているような2つの分子を高圧条件下で特定した。3フッ化セシウム(CsF3)の場合,セシウム原子は1個の価電子と内殻電子2個をフッ素原子3個と共有することになるだろう。同様に,4個の内殻電子が関与して5フッ化セシウム(CsF5)が形成される。「この分子はヒトデのようなとても美しい形になる」とミャオはいう。

 

 一連の発見はNature Chemistry誌に報告された。生じる分子の形もそれらが形成される可能性も「非常に驚くべきことだ」と,ノーベル賞化学者でコーネル大学名誉教授のホフマン(Roald Hoffmann)はいう。■

 

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