虫はいいけどクモはだめ~日経サイエンス2014年2月号より
いまは現役を退いている昆虫学者のベッター(Rick Vetter)は,誰もが自分のようなクモ好きではないことは理解している。だが,6本脚の昆虫を喜々として調べている仲間の昆虫学者のなかにも,8本脚の蛛形(しゅけい)類は大嫌いな人がいることを知って驚いた。
ベッターがクモに対するこの嫌悪に初めて気づいたのは,カリフォルニア大学リバーサイド校に在職していたころのこと。同僚のなかには,ベッターが飼っているドクイトグモやクロゴケグモを見て恐怖で後ずさりする人もいた。
興味を抱いたベッターはクモを怖がる昆虫学者41人にアンケートしてクモ嫌いの程度を調べた。ほとんどは単に嫌いという程度だったが,なかには本格的なクモ恐怖症に相当する人もおり,この結果をAmerican Entomologist誌に報告した。恐怖症患者によくあるように,クモ嫌いの科学者の多くも子供時代のトラウマ的な経験が恐怖の原因になっていた。
30種類の動物の好感度を尋ねて結果を集計したところ,クモは29位になった(最下位はダニ)。クモ類が嫌いな理由として,脚の多さや,“不安にさせる”動き方などが挙がった。「このアンケートに回答を記入するだけでもゾッとする」と書いた研究者もいた。■
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