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マグロやカツオの祖先は深海魚~日経サイエンス2014年2月号より

中生代末の大絶滅を深海でやり過ごし,海洋表層へと進出した

 

恐竜が姿を消した約6500万年前の中生代白亜紀末の大絶滅は哺乳類や鳥類などにとっては飛躍の時期だった。海でも陸と同様,生物種の大変動が起きた。首長竜類など体長10mを超える海生爬虫類やアンモナイトが絶滅する一方,暗黒の深海で暮らしていた魚の一種が新たな進化の階段を上り始めた。日の当たる浅海に進出し,大海原を高速で動き回りながら小魚を漁るマグロやカツオなどへと進化を遂げたのだ。千葉県立中央博物館と英オックスフォード大学,国立科学博物館,東京大学大気海洋研究所,ノルウェー・ベルゲン大学の研究者からなる国際共同グループの研究で明らかになった。

 

マグロやカツオはサバなどとともにサバ科に属する。全世界で3万種いる魚類の中でサバ科は57種の小グループながら海洋表層のほとんどの水域に生息し,水産資源として非常に重要だ。それだけによく研究が進んでいるかというと「実は謎が多かった」と今回の国際共同グループのリーダーである千葉県立中央博物館の宮正樹・動物学研究科長は話す。

 

大きな謎はその進化的起源だ。湖沼や海底と違って隠れ場所がほとんどない海洋表層の遊泳魚の代表格がどのように誕生したかわかっていない。その祖先はいつどこで生まれ,それがどのような道筋を経て現在の57種へと進化したのか不明だった。またサバ科はカマス科やタチウオ科,メカジキ科,マカジキ科などとともにサバ亜目(6科147種)に分類されてきたが,カジキの仲間の2科はサバ科とは近縁ではないことがわかり,サバ科さらにはサバ亜目の位置づけが不明確になってきている。

 

新たな魚類グループ「ペラジア」

そこで研究グループはサバ亜目が属する非常に大きなグループ,スズキ類(13目269科の約1万7000種)を対象に,どの科がサバ科と近縁なのかゲノムのデータベースを使って調べ直した。その結果,サバ亜目ではない,つまり従来は近縁とは考えられていなかった6亜目12科もサバ科と祖先が同じであることがわかった。一方,サバ亜目6科の中ではサバ科とタチウオ科,クロタチカマス科は同じ起源だが,残る3科(カマス科とメカジキ科,マカジキ科)は別系統で,むしろアジやカレイの仲間に近縁であることが明らかになった。

 

新たに浮かび上がってきたサバ科を含む15科232種の顔ぶれはバラエティーに富む。引き締まった体で海洋表層を俊敏に泳ぎ回るマグロやカツオがいるかと思えば,暗黒の深海に生息し体がプヨプヨして軟らかいイレズミコンニャクアジや,うちわのように大きな背ビレと尻ビレを持つベンテンウオもこのグループに入る。幼魚期までクラゲと共生するユニークな生活史を持つエボシダイもメンバーだ。体長30cmほどのヤエギスから体長4m超のクロマグロまでサイズも様々だ。

 

共通点もある。いずれも外洋を主要生息域とする捕食型の遊泳性魚類で,海底に生息する種は含まれていない。成魚の体長が30cmより小さい種はほとんどいないので,大まかに言えば大型魚類に属する。そこで研究グループはこれら15科からなる新たな分類群をギリシャ語で「外洋に住むもの」を意味する「ペラジア」と名付けた。(続く)

 

 

続きは現在発売中の2月号誌面でどうぞ。

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