
モノ作りは秩序だ。理知的に整えられた秩序である。
自然は人間の好みに合わせて世界をつくってはいないので,私たち人間が整理し直す必要がある。新たな秩序を生み出すには,新秩序に沿ったモノがどんな外観になりそうかに関する情報と,それをどのようにして作るかという知識,実際に形にするためのエネルギーがいる。過去の技術革新の多くは,水力や蒸気機関,電気モーター,内燃機関など,この方程式のエネルギー部分に注目していた。
だが,現在進行中の技術革新は違う。それを駆動しているのは情報だ。ボーイング747やiPhoneはほぼありふれた材料でできており,材料自体は1ポンド(約450g)でせいぜい数ドルにすぎない。しかし最終製品の価格は1ポンドあたり何千ドルにもなる。この価値の大半は,その製品に含まれている情報による。雇用も人々の生計も,ここによっている。
オバマ大統領は2013年の一般教書演説で米国に「仕事(雇用)を呼び戻す」と述べた。古き良き時代に戻るというニュアンスの表現だが,新たな仕事は“帰ってきて”いるのではない。新たに生まれているのだ。いま製造業が成長しているのは中国やインドなどの“発展途上国”であり,これら比較的貧しい地域が少し豊かになりつつある。しかし,機械装置や材料,ノウハウはどこか他国のものに依存している。先進諸国のチャンスは,より多くのツールを作るのに必要なハイテクツールを作り出し,物質を理知的に操作するのに必要となるコンピュータープログラムや資金,物流システム,マーケティングを供給することにある。こうしてモノ作りは今後も,より少量の材料により多くの情報と知識をより少ないエネルギーを用いて詰め込み続け,世界をお望みの形に変えていくだろう。(編集部 訳)
著者
Ricardo Hausmann
ハーバード大学の教授で,専門は経済発展の実践に関する研究。国際開発センターの所長を務めている。
原題名
How to Make the Next Big Thing(SCIENTIFIC AMERICAN May 2013)