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終わらない風疹の流行〜日経サイエンス2013年10月号より

来年に再来の恐れ,子どもの先天性異常は増える見通し

 

風疹患者の紅斑/wikipedia

 

7月の最終週,新たに報告された風疹の患者数は154人と,半年ぶりに200人を割り込んだ。1万3000人を超える患者を出した今年の流行は,ようやく峠を越したかに見える。だが,ワクチンを受けていない成人男性が多い日本では「感受性者(免疫を持たず風疹を発症する恐れのある人)はまだ数百万人残っている」(国立感染症研究所の多屋馨子室長)。対策が進まなければ来年再び流行する恐れが強い。

 

日本では風疹というと「珍しくない病気」との印象が強いが,実は先進国では稀な疾患だ。ほとんどの国ではワクチンによって風疹を抑え込んでいるからだ。理由は,いったん風疹の流行が起きると,その後に目や耳,心臓などに先天性の異常が起きる先天性風疹症候群(CRS)の子どもが増えるため。これを防ぐには女性にワクチンを打つだけでは不十分で,風疹の流行そのものを抑える必要があることが,疫学データによって示されている。

 

病気自体は1週間程度で治まることが多いが,大人がかかると重症化しやすく,成人患者が多い今回の流行では子どもが流行の中心だったときと比べて合併症の発生頻度が高い。今年最多の感染者を出した東京都では,風疹が重症化して脳炎を発症した人が476人に1人,血小板減少性紫斑病が265人に1人の割合で報告されている(東京都健康安全研究センター調べ)。

 

一方,風疹ワクチンの副作用は,年齢によるが接種者の7〜18%に発熱,1〜5%に発疹が見られる。また重篤な副作用としては約100万人に1人の割合で血小板減少性紫斑病が起きる。だが風疹流行によって起きるCRSや重症化のリスクと比較すると小さいとの判断から,先進国はワクチン接種を積極的に進めている。

 

米国では早くから男女の幼児に接種しており,2004年に国内感染がなくなり,風疹を排除した。日本と同様に成人の間で風疹が流行したコスタリカとチリでは成人への一斉接種を実施し,排除に成功した。南米・北米大陸の国はいずれも2012年までに海外からの持ち込み以外の国内感染を根絶している。西欧諸国でも年間の発症者は数十人規模に抑えられている。

一方,東欧やアジア,アフリカではいまも風疹がしばしば見られる。昨年,1万人を超える風疹患者の報告があったのは中国とルーマニアだけだったが,データが未整備の途上国の中には,今も流行が続く国があるとみられる。日本は2353人の感染者を出した昨年に引き続き今年も流行国に名を連ねるが,「先進国でこれほどの大流行が起こるのは異常な事態」と,理化学研究所新興・再興感染症研究ネットワーク推進センターの加藤茂孝博士は憂慮する。(続く)

 

続きは現在発売中の10月号誌面でどうぞ。

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