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耐性菌vs.捕食菌〜日経サイエンス2013年10月号より

「細菌を食べる細菌」で薬剤耐性菌を撃退

 

 薬剤耐性菌による感染症を撃退する目的で,科学者たちは「捕食性細菌」に目を向けている。ラトガーズ大学のカドゥーリ(Daniel Kadouri)が率いる微生物学者グループは最近,2種類の捕食性細菌に注目している。細菌に取り付いてその中身を吸い出すミカビブリオ・アエルギノサヴォルス(Micavibrio aeruginosavorus)と,細菌の内部に潜り込んで寄生生物のように増殖するブデロビブリオ・バクテリオヴォルス(Bdellovibrio bacteriovorus)だ。

 

 カドゥーリらはどちらの捕食菌も危険な微生物を死滅させることを以前に示していたが,薬剤耐性菌については確定的な試験をしていなかった。そこで,病院でよく見つかる14種の薬剤耐性菌を培養してそれぞれの捕食菌をそこに放ち,捕食菌が多くの病原菌を一掃するのを確認した。結果はPLOS ONE誌電子版5月1日号に掲載された。

 

人間には無害

 だが,この捕食菌は人間の細胞も攻撃するのではないか? カドゥーリらはこの点を確かめてPLOS ONE誌6月18日号に報告した。この捕食菌は目の感染症に関連する細菌を死滅させたが,人間の目の細胞には影響しなかった。薬剤耐性菌を研究しているウォルター・リード陸軍研究所の微生物学者ズラウスキ(Daniel Zurawski)は「自然をうまく利用し,感染された宿主に有利になるよう抗生物質とは異なる手段でバランスをとるのは,実に重要なアプローチだ」と評価する。

 

 米疾病対策センター(CDC)によると,院内感染患者は米国だけで毎年200万人に達し,その原因の多くが薬剤耐性菌だ。強力な新しい抗生物質でも,この問題を完全には解決できない。病原菌のコロニーはバイオフィルムに包まれていることが多いからだ。バイオフィルムはねばねばした保護膜で,たいていの表面に付着する。これに対し,捕食性細菌はバイオフィルムを破って入り込み,内部の微生物を死滅させることがカドゥーリらの以前の研究でわかった。感染防止に新たな道が開ける。

 

 捕食性細菌が血中に入ると免疫系が反応する可能性があるので,「外傷ややけどの創傷面に塗布する」のが最善だとカドゥーリは考えている。彼らは現在そうした治療法を動物で試しており,人間での臨床試験も視野に入れている。■

 

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