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暗黒物質の痕跡を発見?〜日経サイエンス2013年6月号より

国際宇宙ステーションでの反粒子観測の初結果が出た

 

 宇宙空間を飛び交う反粒子を検出するアルファ磁気分光器(AMS)実験の最初の結果が去る4月3日に発表された。電子や陽子など物質を構成する粒子には,それぞれ質量は同じで電荷の符号が逆の反粒子が存在する。電子の反粒子は陽電子,陽子の反粒子は反陽子などという。今回,陽電子のうち運動エネルギーが高いものが,現行理論で想定されるよりかなり多いことがわかった。正体不明の暗黒物質粒子に由来する陽電子をとらえている可能性があるが,パルサーと呼ばれる天体が放出している陽電子である可能性もある。今後も実験を続け,高エネルギー陽電子の源を突き止める計画だ。

 

 AMSは米欧アジアの約60の大学・研究機関の約600人の研究者が参加する国際共同実験で1990年代前半にプロジェクトが始まった。1998年には予備実験としてスペースシャトルで検出器AMS-01が打ち上げられ,軌道上で観測を実施。それを踏まえて検出器AMS-02が開発され,2011年5月にシャトルで国際宇宙ステーションに運ばれ実験が始まった(G. マッサー「宇宙ステーションの至宝 アルファ磁気分光器」日経サイエンス2011年6月号)。検出器の開発・製造費用は約15億ドル(シャトルによる輸送費用は除く)。リーダーの米マサチューセッツ工科大学のティン教授(Samuel Ting)は1974年にJ/ψ粒子(チャームクォークを含む中間子)を発見,ノーベル物理学賞を受賞したことで知られる。

 

 日本は研究グループとしては加わっていないが,東京大学出身の灰野禎一台湾中央大学助教が中心メンバーの1人として活躍している。このほど来日し,AMSの最新結果を東京大学宇宙線研究所のセミナーなどで報告した。

 

反粒子の由来

 宇宙誕生時,粒子と反粒子はきっかり同数が生み出されたが,その後,宇宙が進化する過程で不均衡が生じ,現在,私たちの身の回りには粒子しか存在しない。ただ宇宙空間では少量だが反粒子が常に生み出されている。宇宙には高エネルギーの陽子や電子などの「宇宙線」が飛び交っており,それらが星間ガスや地球大気などと衝突すると反陽子や陽電子が生み出される。反粒子はペアを構成する粒子と出合うと消滅して光子に変わるが,宇宙空間は非常に希薄なので,反陽子や陽電子は超遠方まで飛んでいく(続く)

 

 

続きは現在発売中の6月号誌面でどうぞ。

再録:別冊日経サイエンス196「宇宙の誕生と終焉 最新理論でたどる宇宙の一生」

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