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北極の氷を破るロシアの戦略〜日経サイエンス2013年1月号より

新たな原子力砕氷船を建造

 

 浅い河川と凍りついた北の海の両方を航行できる原子力砕氷船によって,北極圏の支配を目指すロシアの試みに弾みがつきそうだ。ロシアの原子力船舶公団ロスアトムフロートは去る8月,厚さ約3mの氷を打ち砕いて進むことができる約12億ドルの大型船を建造する契約にサインした。

 

 出力60メガワットのRITM-200小型加圧水型原子炉を2基搭載する。液体バラストを備え,喫水(船が水中に沈む深さ)を8.5mから10.8mの間で変えられる。そのため,ロシアの内陸深くに達するシベリアの河川でも,水深の深い北極海でも航行できる。

 

 原子力砕氷船を建造する理由は何か? ブルッキングス研究所のエビンガー(Charles Ebinger)は「ロシアが砕氷船に強い関心を寄せている背景には気候変動がある」という。「ヨーロッパからロシア北岸に沿ってアジアへ至る北極海航路に大きな変化が起こっている。海氷が過去数年で急減し,ロシア北極圏における海上交通が爆発的に増えた」。

 

 海氷の融解は今後も続くと予測されるが,年間を通じて北極海航路を運航するには,ところどころでやはり砕氷船が必要になるだろう。砕氷船はロシアの大陸棚境界に関するデータを収集するためにも欠かせない。そうしたデータは広大な北極海水域について排他的な経済権を主張し,米国やカナダ,ノルウェー,デンマークなど他国の主張をかわすために必要になる。ロシアはロモノソフ海嶺と呼ばれる海底の地形はシベリア大陸棚の延長であり,ロシアが排他的権利を持つと主張している。

 

 ロシアは現時点で原子力砕氷船を建造している世界で唯一の国であり,出力の低いディーゼル駆動の大型砕氷船とともに,数隻の原子力砕氷船が稼働中だ。

 

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