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犬のしっぽ追いは強迫性障害?〜日経サイエンス2013年1月号より

人間の反復行動に通じる点がいくつかある

 

 ぐるぐると自分のしっぽを追うジャーマン・シェパードや見えないハエに食いつくブルテリアは,飼い主の目にはかわいらしく見える。だが,イヌのこうした自発的行動は強迫性障害(OCD)の表れらしく,人間の強迫性障害を解明するヒントになるかもしれないという。

 

 「こうした強迫行動の一部は特定の犬種に見られることが多く,遺伝的な要因が考えられる」と,ヘルシンキ大学のイヌゲノム学教授で去る7月のPLoS ONE 誌にイヌの強迫行動についての論文を共著したロヒ(Hannes Lohi)はいう。ロヒらは強迫性障害についてもっと知るため,フィンランド在住のイヌの飼い主368人に詳細なアンケートをした。うち強迫行動の兆候が認められなかった150例を対照群とした。また,調査対象のうち181匹から血液サンプルを採取した。採血対象となったのは標準的なブルテリア,ミニチュア・ブルテリア,スタッフォードシャー・ブルテリア,ジャーマン・シェパードの4種だ。

 

 イヌの強迫性障害の特徴のいくつかは人間のそれと似ているという。強迫性障害のイヌが反復行動を示し始めた時期は,人間の場合と同様,性的に成熟する前だった。一生に数回しか症状が出ないイヌもいれば,一日中ずっと反復行動が続くイヌもいた。同じ母親から生まれた同腹子は同じ行動傾向を示すことが多かった。「この障害の発症の背景には共通の生物学的要因があるのかもしれない」とロヒはいう。

 

 だが,異論もある。オーストラリアにあるプリンス・オブ・ウェールズ病院神経精神病学研究所の所長サチデフ(Perminder Sachdev)は,人間は動物と違って,こうした厄介な行動に気づいて抑止しようとするのがふつうだと指摘する。しっぽ追いは強迫行動というよりも,自閉症患者によく見られる定型化した反復行動に似ていると主張する。「しっぽ追いが強迫性障害の真のモデルだと主張するのは難しいと思う」とサチデフはいう。だがロヒはイヌと人間の強迫性障害の関係をさらに調べる計画だ。

 

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