News Scan

自閉症を治す薬〜日経サイエンス2013年1月号より

根本的な原因を正す新薬が開発されている

 

 自閉症の治療はこれまで,不安や攻撃性,繰り返し行動といった外面的な症状を抑える薬に限られていた。しかし次々と開発されている新薬のデータから,自閉症の根底にあるメカニズムを初めて治療できる可能性が出てきた。自閉症者が他人とうまく意思疎通できるようになるかもしれない。

 

 自閉症の多くは特発性,つまりはその原因がわかっていない。だが動物を使ったいくつかの研究から,脳内のシグナル伝達に問題がある可能性が示されている。そうしたシグナル伝達問題を標的にすれば,手に負えないとされてきた自閉症の症状を改善できる可能性があると一部の研究者はみている。

 

脆弱X症候群と自閉症

 シグナル伝達の問題が知られるようになったのは,単一遺伝子の不具合によって起こるいくつかの疾患が自閉症につながる場合があり,それらが調べられたことによる。自閉症患者のうち約15~20%がそうした疾患を伴っていると,自閉症支援団体オーティズム・スピークスの科学担当理事ドーソン(Geraldine Dawson)はいう。かなりのケースで自閉症を引き起こす「脆弱X症候群」という遺伝病では,ニューロン間の接点に興奮性シグナルを伝えるグルタミン酸という化学物質が多くなりすぎる。

 

 脳には「最適な活性レベルというものがある」のだが,脆弱X症候群ではこの平衡が崩れていると,バイオ企業シーサイド・セラピューティクス(マサチューセッツ州ケンブリッジ)の共同設立者で最高経営責任者であるカーペンター(Randall L. Carpenter)はいう。同社は興奮性と抑制性の神経伝達物質のバランスを回復させる薬を開発中だ。最適バランスに戻れば,背景雑音をカットして重要な情報に集中するのに必要な脳神経回路が発達するようになるかもしれないという。そうなれば,自閉症患者は感覚刺激に翻弄されることが少なくなり,他者との意思疎通が楽になるだろう。(続く)

 

続きは現在発売中の1月号誌面でどうぞ。

サイト内の関連記事を読む