太陽系の果てに謎の新領域?〜日経サイエンス2012年12月号より
ボイジャー1号が新たなミステリーをもたらした
米航空宇宙局(NASA)の探査機ボイジャー1号は太陽系の外縁部で長い旅を続けてきたが,太陽系の外に出るまでにはもう少しかかるかもしれない。
35年前に打ち上げられたボイジャー1号は地球から最も遠くまで旅した宇宙船だ。現在は太陽から182億kmのところにいる。冥王星の平均軌道半径の3倍以上の距離だ。太陽の支配圏を脱して恒星間空間に入るという大目標に向かって,順調に旅を続けている。だが最近の研究によって,この前人未踏の一歩を踏み出すのはこれまで考えられていたよりも先になりそうなことが示された。
ボイジャー1号は8年ほど前に「ヘリオシース」という領域に入った。太陽風(太陽から吹き出している電離ガス,プラズマの流れ)の速度が,恒星間空間プラズマの抵抗を受けて遅くなり始める領域だ。そして2010年,ボイジャー1号の背後を吹いている太陽風の速度が急に低下した。ヘリオシースと星間空間の境界である「ヘリオポーズ」に近づいたために,星間プラズマの流れで太陽風がそらされたのだろうと考えられた。
しかしジョンズ・ホプキンズ大学応用物理学研究所のデッカー(Robert B. Decker)らはNature誌9月6日号に,そのような太陽風の偏向は起こっていないと報告した。この結果,2つの可能性が生じる。ボイジャー1号がまだヘリオポーズには達していないか,プラズマが予想外の動きをしているか,そのいずれかだ。
以前の予測では,ヘリオポーズはボイジャー1号のすぐ先にあるか,あるいは今後7年ほど飛行した先にあるかのどちらかだと考えられていた。今回の発見は後者を支持する。だが,デッカーは予測をさらに複雑にする新データを得ている。最近数カ月,ボイジャー1号は太陽系プラズマと星間プラズマが混合した粒子を検出しているという。これはボイジャーが予想外の別の境界面に達したことを意味している可能性がある。これまで知られていなかった空間かもしれない。
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