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灼熱の水星に氷〜日経サイエンス2012年7月号より

探査機が新たな兆候をキャッチ

 

 水星は極限の世界だ。太陽に最接近した際の日中の温度は,赤道付近で400℃に達し,鉛も溶ける高温だ。夜になると,惑星表面の温度は−150℃以下に落ち込む。

 しかし,もう少し安定した場所もある。このちっぽけな惑星の極地にあるクレーターの内部には,クレーターの縁の陰になって日光が決して当たらない部分(永久影領域)が存在する。日中を通じ,温度は低いままだ。

 米航空宇宙局(NASA)の探査機メッセンジャーからの新データが3月の月惑星科学会議年会で発表され,水星が太陽に近いにもかかわらずこれらの永久影領域にたくさんの氷をため込んでいるとする以前からの仮説を裏づけた。

 

クレーターの内部に

 メッセンジャーは2011年から水星を周回しており,水星表面についてこれまでにない精密な地図を描いてきた。その極地のクレーターの地図は,地球からのレーダー観測で得られた以前の画像とよく一致している。以前のレーダー観測では,周囲の地形よりも電波をよく反射する部分が,異様に明るい点として写っていた。氷は電波をよく反射する。

 だが,小さなクレーターや,低緯度にあって氷が存在しにくいと思われるクレーターにも,こうした明るい点が見られた。これら氷の堆積物はおそらく細かな土壌粒子(レゴリス)の薄い層に覆われていて,それが断熱材となって氷の昇華を防いでいるのだろう。

 今回,メッセンジャーのデータによって,クレーターの内部が確かに断熱材料で覆われていることが確認できた。クレーターの影領域の温度は,有機物で黒みがかったレゴリスに覆われた氷が存在できる温度にまさに等しいと,カリフォルニア大学ロサンゼルス校のペイジ(David Paige)は説明した。

 地上レーダーが昔に特定したこの構造に新たな光が当たったことで,「これらが主に熱的安定状態にある氷からできていることがほぼ確実になった」とペイジはいう。

 

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