1997年10月6日
プルシナーがノーベル賞をとった!
たった今(10月6日夜7時前),日本経済新聞の科学技術部から連絡が入りました。プリオン研究で知られるプルシナー(Stanley B. Prusiner,カリフォルニア大学サンフランシスコ校)がノーベル医学・生理学賞をとりました(写真はノーベル財団の提供です)。
10月25日発売の日経サイエンス12月号にプルシナーの論文の再収録を決定!!
正直なところ,日程的には本当に厳しいのですが(今でも,本当に出来るの,という声が編集部にあります),私たち日経サイエンス,Scientific Americanにとっては,プルシナーは特別な存在なんです(まぁ,下を読んで下さい)。だから,やります。写植屋さん,印刷屋さん,迷惑をお掛けします。
インチキ科学者扱いされたプルシナー
狂牛病や痴呆を招くクロイツフェルト・ヤコブ病の原因となるプリオンを発見したプルシナーは,プリオンを発表した当初(1982年),そのあまりの突飛さに,ほとんどインチキ科学者扱いされました。何せ,DNAもRNAもない,タンパク質だけのプリオンが病原体になるというのですから! 最初は,科学的事実をめぐる論争だったのですが,やがて,誹謗中傷になっていきました。
プルシナーを支持したScientific Americanと日経サイエンス
でも,日経サイエンスの提携誌であるScientefic American誌は,プルシナーを支持し続け,彼の論文を掲載しました。だから,日経サイエンスにとって,プルシナーは特別な存在です。プルシナーにとってもScientefic Americanは,特別な存在なのです。来日したプルシナーにうちの編集部のKが「Scientefic Americanの日本版の編集部の者です」と名乗ったら,非常に喜んでくれました。
下のリストで,プルシナーの研究とプリオン仮説をめぐるゴタゴタがわかります(ごめんなさい,在庫はありません)
以下,プルシナーと彼の研究に関連した掲載論文のリストを載せます。
「核酸をもたない生命体“プリオン”」プルシナー著
サイエンス(現・日経サイエンス)1984年12月号
原題は PRIONS
別冊サイエンス78「細胞分子生物学」に収録
「プリオンはどこまで解明されたか」プルシナー著
日経サイエンス1995年3月号(10月25日発売の日経サイエンス12月号に急遽,再収録決定!)
原題は The Prion Diseases
ヨーロッパで狂牛病が話題になる前の年に掲載している点にご注目下さい。
百家争鳴「プリオン研究が教えたこと」立石潤・著
日経サイエンス1995年4月号
最後には個人攻撃にまでなったプリオン仮説をめぐるゴタゴタを紹介します。
立石先生は日本でのプリオン研究の第一人者です。プルシナーとも親交が深く,プルシナーは必ずノーベル賞をとると“予言”されていました。
話題の研究「プリオン病は感染症か遺伝病か──マウスへの感染が確認された致死性家族性不眠症」立石潤・著
日経サイエンス1995年11月号
プルシナーとは直接関係はないかもしれませんが,プリオン病を紹介しています。
科学の窓「狂牛病はヒトに感染するか」日経サイエンス編集部
日経サイエンス1996年5月号
このころ,ヨーロッパで狂牛病が話題になり,病原体プリオンの知名度が急激に上がりました。
世界の科学者「立石潤・プリオン研究を科学にした日本人」日経サイエンス編集部
日経サイエンス1996年6月号
前述の立石先生を紹介した記事ですが,プルシナーとの出会いと親交,プリオン仮説をめぐる,最後には誹謗中傷にまでなったゴタゴタが紹介されています。
ホームページ上で上の記事を流します。
著作権上問題のないもの,データのあるものに限り,準備が出来次第,ホームページ上で流しますので,ご期待下さい(ごめんなさい,今日の更新では,ちょっと時間的に無理なんです)。