日経サイエンス  2012年4月号

特集:小澤の不等式

 「不確定性原理に欠陥」「ハイゼンベルクの不確定性原理を破った」。

 2012年1月16日、新聞各紙や弊誌サイトに躍った劇的な見出しは,興奮と混乱を巻き起こした。ネットには「量子力学が否定されたのか」という驚きと,「不確定性原理は数学的に証明されている。破れるはずがない」「誤報だ」との批判があふれた。

 

 この混乱は,小澤と長谷川らのチームが実験で破った「ハイゼンベルクの不確定性原理」と、研究者たちが思い浮かべた「教科書の不確定性原理」が、実は別物だという点に起因する。しかもその2つが別物だということは,物理学者の間ですら,あまり認識されていていない。

 

 ハイゼンベルクの不確定性原理と、教科書に書かれた不確定性原理は何が違うのか。ハイゼンベルクの不確定性原理を書き換えた「小澤の不等式」とは何か。それはどのように生まれ,何をもたらしたのか。注目の成果を,今回の実験の詳細を含めて報告する。

 

 あわせて3月号で紹介したダブルスリット実験における光子の奇妙な振る舞いを,不確定性原理とのかかわりを通して読み解く最近の議論について、著者の谷村省吾氏に解説して頂く。

 

 

不確定性原理の再出発 古田彩(編集部)

 

不確定性原理で「光子の逆説」は解けるか 谷村省吾(名古屋大学)

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