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幻のホットハンド〜日経サイエンス2012年4月号より

スリーポイントを決めたプロバスケ選手はもう一度スリーポイントを狙う傾向が強い

 

 レジー・ミラー,マイケル・ジョーダン,コービー・ブライアント。これらプロバスケットボールのスター選手たちはみな,勢いに乗って神業シュートを連発してきたように思える。だが,シュートを決めた選手はその後もシュートを決めやすくなるという,いわゆる「ホットハンド」は神話であることが,これまでの研究でわかっている。私たち人間には,存在していないパターンを発見してしまう傾向があり,これもそこから来ているのだ。

 ホットハンドはともかくとして,選手たちは自分のシュートが好調に思えたときには,実際にはそれほどではなくても,「自分は波に乗っている」といまだに考えているようだ。最近の研究から,プロバスケ選手は最後に放ったスリーポイントシュートの結果を重視しすぎていることがわかった。スリーポイントが成功したときには,失敗した場合に比べて,もう一度スリーポイントを狙う例がずっと多い。Nature Communications誌に掲載されたこの研究結果はNBAとWNBAの数百人の選手について実際の試合の統計を解析したものだ。

 2007〜2008年のシーズンでMVPを獲得したレイカーズのブライアント選手が典型例だった。彼は同シーズン中,スリーポイントを決めた際に,失敗した場合の約4倍の頻度で深いところから再びスリーポイントを狙った。

 ただしスリーポイントの波に乗ろうとするのは総じて悪い戦略だ。選手たちが実際にシュートを決める確率は,前のシュートが成功した場合よりも失敗していたほうが高くなる傾向がある。やはりホットハンドは幻なのだ。

 

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