極限環境で生まれる星〜日経サイエンス2005年12月号より
超大質量ブラックホール近くの厳しい環境でも,星が生まれることがあるらしい。近赤外線による観測の結果,天の川銀河の中心にある超大質量ブラックホールから0.3光年以内の領域に約100個の大質量星が存在することがわかった。これらがどこか別の場所で生まれた後に銀河の中心部へと落ちてきたのなら,何万個もの低質量星を伴っているはずだ。ブラックホール周辺に小さな星が存在すると極めて明るいX線源になるが,実際に観測されたX線はそうした星の1000個分にすぎない。
したがって,これらの大質量星はブラックホールの近くで形成されたに違いなく,おそらく周辺の降着円盤が断片化して生まれたと考えられる。研究チームの一員,英国レスター大学のナヤクシン(Sergei Nayakshin)は「理論的にはかねてその可能性が指摘されていた」と話す。論文はMonthly Notices of the Royal Astronomical Societyに掲載予定。