ブラックホールを見る〜日経サイエンス2006年3月号より
ブラックホールは光さえものみ込んでしまうので,望遠鏡でその内部をのぞき見ることはできない。しかし,「事象の地平」を見ることは可能になるかもしれない。事象地平はブラックホールから光が永久に出てこられなくなる境界面だ。
ブラックホールの背景から来た光は事象地平で吸収されるので,高解像度の望遠鏡で観測すれば影となって見えるはずだ。その周りには,まるで日食時のコロナのように,明るい光の輪ができるだろう。
最近,天の川銀河の中心にあるブラックホールとみられる天体について,これまでで最も鮮明な画像が撮影された。10基の電波望遠鏡から構成され,幅8,000kmにおよぶ「超長基線電波干渉計」を利用した観測だ。Nature誌2005年11月3日号に掲載された解説によると,この望遠鏡の分解能を4倍にするだけで事象地平を明確にとらえられる。10年以内にも可能だろうという。