SCOPE & ADVANCE

自分でできる水虫診断〜日経サイエンス2006年4月号より

菌に反応する抗体を使った簡易キットを開発

 

 水虫かな?と思ったら,自分で病変部の皮膚や爪を少し削り取り,小さな試験管に入れる。アルミ袋から試験紙を取り出し,試験管に3秒浸すと,5分後には判定結果が出る。試験紙が赤紫色に変色していたら陽性だ。
この簡易診断キットを開発したのは福井大学の法木左近(のりき・さこん)助教授のグループ。水虫の菌が確実に検出できることを試作品で確認した。

 

熟練医の診断を手軽に

 水虫は白癬菌という皮膚にすみつく糸状菌が原因となる感染症だ。感染場所によって水虫(足),爪白癬(爪),しらくも(頭部),いんきん(陰部)など病名も変わる。日本の水虫患者は推計2,500万人を超える。かつては水虫といえば中年男性のものと思われていたが,ブーツを履く女性が増えたため,男女の差はなくなった。
 皮膚科での診察に抵抗のある人や,忙しくてなかなか病院に行けない人も多く,治療が遅れて慢性化するケースもある。市販の治療薬で自覚症状がなくなると,治ったと思い込んで薬を止め,さらに悪化させてしまうことも少なくないという。
 現在の水虫診断は専門医による直接検鏡法がほとんどだ。病変部の皮膚角質層(鱗屑)を少し採取して,苛性カリ(水酸化カリウム)で皮膚を溶解し,残った白癬菌の有無を顕微鏡で見る。この検体は無染色なので,確実な診断には熟練が必要だ。しかし,開発した自己診断キットには熟達した医師の診断は必要ない。症状が治まった後,本当に白癬菌が死滅したかどうかも簡単にチェックできる。

 

白癬菌だけに反応する抗体

 自己診断キットの開発にあたって,法木助教授らは白癬菌に対する抗体を作製することから始めた。抗体は通常のモノクローナル抗体(単一の抗原に対して特異的に反応し,化学的にも構造的にも均一な抗体)と同じ方法で作製したが,抗原としてマウスに白癬菌アレルゲンを投与したのは世界初の試みだ。増殖したクローンの中から白癬菌に反応するクローンだけを選別した。クローン細胞から抽出された抗体は白癬菌属6種すべてに反応し,皮膚に常在する真菌には反応しないことが確認された。診断キットの試験紙上にはこの抗体がついている。
 現在,体外診断薬としては妊娠検査キットが市販されている。開発された水虫診断キットの市販には厚生労働省の承認が必要だ。そのためには,さらに多くの症例で検査を行い,ごく微量(約0.005g)の検体にも反応できるようにしたいと法木助教授は考えている。

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